他人を見下している人に欠けている視点は何か。医師の和田秀樹さんは「自説の正当性を信じて疑わない人は、新しい視点からの意見を受け入れることができない。『知的謙虚』という姿勢、つまり『ものを知れば知るほど、経験を積めば積むほど、自分は優れた頭脳をもっているなどと錯覚せず、謙虚であれ』ということを意識することが肝要だ。知識にとらわれすぎない自由な発想のお手本は『ドラえもん』の全編に貫かれている『こんなこといいな〜、できたらいいな〜』の精神である」という――。

※本稿は、和田秀樹『60歳からは勉強するのをやめなさい』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

暗い個室で容疑者に指を差して質問をする役人
写真=iStock.com/Atstock Productions
※写真はイメージです

人間はバカな人を見て優越感に浸る

世の中には、「自分はものを知らない。知識がまだまだ不足している。どんどん知識を詰め込まなければ」と思い、知識注入型の勉強スタイルに固執する大人がいます。

その一方で、逆に「自分はまわりの人間よりものをよく知っている。それに引き替え世間にはバカが多い」と他人を見下す態度を取る人もまた結構多いものです。

これは人間の性なのかもしれませんが、なまじっか自分が勉強していると、他人がバカに見え、また、バカな人を比較対象とすることで優越感に浸るというクセがあります。

ただ、ここにも考え方の落とし穴があります。本書では知識を絶対視せずに疑う姿勢の大切さを述べてきました。ここにさらにもうひとつ大切な視点があります。

それは、「自説を過信しすぎて絶対視しないこと。自説を疑う勇気をもつこと」です。

わたし自身の体験のなかにこんなことがありました。かつてある経済学の権威と話をする機会を得ました。

そのとき、わたしは「法人税や所得税を増税し、そのかわり経費の範囲を緩和し、大幅に認めたほうが消費刺激効果が高くなり、経済が活性化するのではないか」という意見を述べたのです。

それに対する経済学者の答えはこうでした。

「それは誰の学説なのか。経済学を学んだことのない素人の思いつきにすぎないじゃないか」

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