“かくあるべし”は自分の首を絞めるモト
働き続けることを決断したあなたへ。
よくぞ決心されました。この記事では、少しでも長く楽しく働き続ける心の在り方について、お話ししていきます。
まずは、あなたの心に潜んでいる“べき”を手放しましょう。
たとえば「老害って思われないようにすべき」「職場に馴染むべき」「職場では褒められるべき」……。いやいや、そんな“べき”は一度忘れましょう。大切なのは、仕事をきちんと遂行することだけなのですから。
“かくあるべし”というように、人間の判断をゆがめてしまう思考パターンを「不適応思考」と呼びます。平たく言うと、私たちの考え方を勝手にゆがめてしまう癖みたいなものです。この不適応思考が深刻化すると、精神的な落ち込みが強くなり、やがてはうつ病を発症しやすくなります。
では、人はなぜ不適応思考に陥ってしまうのでしょうか。
それは、自分への要求水準が高い、いわば、頑張り屋さんだからです。
自分への要求が高いぶん、「頑張らなければいけない」と自分を追い込み、それができなかった場合は自分自身を「駄目な人間だ」「情けない」と否定的に捉えてしまいます。
つまり自分で自分の首を絞めるように、思考が悲観的になっていくのです。
「そうかもしれない」という別の視点を持つ
そんな患者さんのお話を聞くとき、私は別の視点を持つようアプローチします。
「そういう考え方もありますが、そうとも限らないんじゃないですか」と。
この「別の視点を持つ」というアプローチは、「認知療法」の基本的な考え方のひとつです。
認知療法とは、本人が自分の思考の偏りを「認知」することで、うつ病などの症状の改善を目指す療法です。この療法によって、ネガティブ思考やマイナス思考など、否定的な考え方の癖を変えることが期待できます。
「別の視点を持つ」トレーニングは、一人でも行えます。日頃から常に「そうかもしれない」という思考パターンを自分にプラスすればいいのです。
たとえば、誰かの噂話やテレビや新聞、雑誌などで見聞きしたことをうのみにするのではなく「そうかもしれないけど、別の見方もあるだろう」と異なる考え方や可能性を探すのです。