定年後も働きやすい社会をつくるためにシニア自身ができることは何か。『定年後の超・働き方改革 「楽しい仕事」が長寿に導く!』(光文社)を上梓した和田秀樹さんは「まずは中高年やシニア世代が卑屈にならず、自分の意思で楽しく幸せに生きることが大事」という――。
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“かくあるべし”は自分の首を絞めるモト

働き続けることを決断したあなたへ。

よくぞ決心されました。この記事では、少しでも長く楽しく働き続ける心の在り方について、お話ししていきます。

まずは、あなたの心に潜んでいる“べき”を手放しましょう。

たとえば「老害って思われないようにすべき」「職場に馴染むべき」「職場では褒められるべき」……。いやいや、そんな“べき”は一度忘れましょう。大切なのは、仕事をきちんと遂行することだけなのですから。

“かくあるべし”というように、人間の判断をゆがめてしまう思考パターンを「不適応思考」と呼びます。平たく言うと、私たちの考え方を勝手にゆがめてしまう癖みたいなものです。この不適応思考が深刻化すると、精神的な落ち込みが強くなり、やがてはうつ病を発症しやすくなります。

では、人はなぜ不適応思考に陥ってしまうのでしょうか。

それは、自分への要求水準が高い、いわば、頑張り屋さんだからです。

自分への要求が高いぶん、「頑張らなければいけない」と自分を追い込み、それができなかった場合は自分自身を「駄目な人間だ」「情けない」と否定的に捉えてしまいます。

つまり自分で自分の首を絞めるように、思考が悲観的になっていくのです。

「そうかもしれない」という別の視点を持つ

そんな患者さんのお話を聞くとき、私は別の視点を持つようアプローチします。

「そういう考え方もありますが、そうとも限らないんじゃないですか」と。

この「別の視点を持つ」というアプローチは、「認知療法」の基本的な考え方のひとつです。

認知療法とは、本人が自分の思考の偏りを「認知」することで、うつ病などの症状の改善を目指す療法です。この療法によって、ネガティブ思考やマイナス思考など、否定的な考え方の癖を変えることが期待できます。

「別の視点を持つ」トレーニングは、一人でも行えます。日頃から常に「そうかもしれない」という思考パターンを自分にプラスすればいいのです。

たとえば、誰かの噂話やテレビや新聞、雑誌などで見聞きしたことをうのみにするのではなく「そうかもしれないけど、別の見方もあるだろう」と異なる考え方や可能性を探すのです。