ショルツ政権の下で低下したドイツの価格競争力
ドイツで2月23日に総選挙が行われ、事前の予想通り、中道右派のキリスト教民主同盟・同社会同盟(Union)が第一党となった。Unionを率いるキリスト教民主同盟(CDU)のフリードリヒ・メルツ党首は春までの組閣を目指すとしているが、組閣協議は難航が予想され、新政権の発足は晩春から初夏までにズレ込む可能性が意識される。
Unionを率いるCDUのメルツ党首は、第二党に躍進した民族主義右派の「ドイツのための選択肢」(AfD)との連立を否定している。そのため、第三党に後退したオラフ・ショルツ首相が率いる中道左派の社会民主党(SPD)との間で大連立を組むという観測が有力視されている。しかしUnionとSPDを合わせても議会の過半をわずかに超える程度だという問題がある。
そこに第四党に後退した緑の党(Grünen)が加われば、新政権は安定多数を確保することができる。つまりUnion(黒)とSPD(赤)の黒赤の伝統的な大連立となるのか、あるいはそれにGrünen(緑)が加わる黒赤緑の連立となるのか、という展開が予想される。もちろん、UnionとGrünenが組む黒緑連立の可能性も否定はできない。
とはいえ、どのような組み合わせであろうと、新政権はショルツ政権の下で低下した国際競争力をどう改善させるかという重い課題に直面する。欧州中銀(ECB)が公表するユーロ圏各国の競争力指数(実質実効為替レート)の動きを確認すると、ドイツの価格競争力はコロナショック前の2019年に比べて悪化が顕著なことが分かる(図表1)。
つまりこの間にドイツの価格競争力は2%ほど悪化したが、一方、フランスの価格競争力は3%ほど改善している。そのため、両国の価格競争力は4%ほどの開きが生じたことになるが、これはショルツ政権が進めてきた脱炭素・脱原発・脱ロシアの三兎を追うエネルギー戦略に加えて、分配戦略の強化によるところが大きいと考えられる。



