抑制できたはずだった価格競争力の低下

ショルツ政権下で脱炭素・脱原発・脱ロシアの三兎を追うエネルギー戦略を推進してきたのは、事実上、Grünenのロベルト・ハーベック副首相兼経済・気候保護相だった。ロシア産化石燃料、特に天然ガスへの依存度が高かったドイツの産業構造に鑑み、SPD出身のショルツ首相は当初、ロシア産のガスの利用削減には慎重だった。

オラフ・ショルツドイツ第9代連邦首相
オラフ・ショルツドイツ第9代連邦首相(写真=Christophe Licoppe/European Commission/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

しかしEUがロシア産化石燃料の削減を決めたことや、ロシアが化石燃料の供給を削減したことを受けて、ドイツも非ロシア産ガスの調達を強めざるを得なくなった。ここで仮に石炭火力発電の削減テンポを時限的に減速させたり、あるいは原子力発電の稼働の延長を積極的に行ったりしていれば、ドイツのエネルギー価格の急騰は抑制された。