「長期優良住宅」の認定を受けても万全とはいえない
ここまで読めば、次に気になるのは「結局、日本の持ち家は今後長寿命になるのか?」ということではないでしょうか。
この答えは、残念ながら「現状では微妙」というのが筆者の見解です。
国は、住宅の長寿命化を目的に、2009年から「長期優良住宅」という制度を始めています。この制度は、長期にわたり良好な状態で住み続けられる住宅の基準を定め、基準クリアの認定を受ける制度です。基本的には、おおむねとてもいい制度だと思います。
ただ、「長期優良住宅」の認定を受ければ、それで万全なのかというと、残念ながらそうではありません。
その理由が認定基準の一つである「劣化対策等級」にあります。劣化対等級とは、住宅性能表示制度で建物を評価する項目のひとつです。劣化対策等級によって、建物の劣化対策がどの程度行われているか評価することができます。劣化対策等級のランクは3等級で表され、等級が高ければ高いほど建物は長持ちします。
「長期優良住宅」では最高等級の劣化対策等級3の性能が要求されます。劣化対策等級3は、「3世代の耐久性 75~90年」の耐久性があることになっています。
日本は時代遅れの「シロアリ対策後進国」
ただ、筆者の見解としては、この劣化対策等級3の仕様の住宅だけでは、75年ももたない可能性があると考えています。
それは、この劣化対策等級3が要求しているシロアリ対策が非常に甘いためです。その背景には、日本の住宅業界の闇ともいえる業界の歪みがあります。
日本の住宅が75~90年もつようにするためにはシロアリ対策をなんとかしなければなりません。そうでなければ持ち家は資産にはならないからです。
日本の住宅で一般的なシロアリ対策(防蟻処理)には、大きく2つの問題があります。
1つは、薬剤の問題です。
だいたい9割程度の住宅会社は、合成殺虫剤系の薬剤を使用しています。その多くは、EUでは屋外使用が禁止されているネオニコチノイドといわれる薬剤です。この薬剤は、人体にも有害で、大人も化学物質過敏症を引き起こすリスクがあり、子どもの脳の発達障害やADHD(多動性)の原因物質であると言われています。
さらに問題なのは、合成殺虫剤は有機系なので、効果に永続性がないことです。おおむね5年もたたずに分解されてしまい、防蟻効果はなくなります。そのため基本的には、5年ごとに点検して、再施工することになります。
人体に有害、しかも5年程度しかもたない。日本は、そのようないわば時代遅れのシロアリ対策後進国なのです。