体質の古い地方議会では、女性議員が思ったことを率直に言うと仲間はずれにされ、いじめのような目に遭うケースが少なくない。ジャーナリストの柴田優呼さんは「埼玉県日高市議会に2期トップ当選した田中まどか議員は、4年前、質問する議員が少ないという市議会の実態をフェイスブックに書いて、辞職勧告された」という―――。

都知事候補・石丸伸二も対決した「質問しない」市議会議員

都知事選に立候補した石丸伸二氏が、広島県安芸高田市長の時に「一般質問しない。説明責任を果たさない。恥を知れ」などと言って、議会と対決する一連のYouTube動画が人気を博している。石丸氏の発言には賛否が分かれるが、実際、全国の地方議会では何が行われているのだろうか。記者クラブのある都道府県庁所在地を除くと、全国約1700の市町村議会の様子をメディアが詳しく報道することはほとんどない。社会的関心のブラインド・スポットになってきたのが現実だ。

その一つ、首都圏の郊外にあり、緑が広がる人口5.5万人の埼玉県日高市。そこでフェイスブックへの書き込みや、市民にあてた議会報告の内容がもとで4年前、辞職勧告決議を受けた議員がいる。2期連続でトップ当選をした田中まどか氏だ。支持母体は、生協で活動していた女性たちが約20年前、意思決定の場に女性を送り込もうと作った市民団体「みんなの会in日高」。これまで4人の女性議員を当選させた実績がある。

田中まどか元日高市議会議員
写真提供=田中まどか氏
田中まどか元日高市議会議員

日高市の女性議員・田中氏はなぜ辞職勧告決議を受けたのか

田中氏はなぜ、辞職勧告決議を受けたのか。他の議員や市政を侮辱し、市議会のソーシャルメディア利用のガイドラインに違反した、というのが理由とされた。例えば、以下のようなことが問題になった。

1、議案や予算について質疑をする議員が少ない、とフェイスブックに書き込んだ。その際、他の議員に「早く終わらせて」と質疑の際に言われたことも明かし、「何もせずに座っているのは、それはお辛いことでしょう」とコメントした。
2、市の予算に対し、「『重点施策』と銘打ったものでさえ、目玉事業も新規事業も無く、わくわく感がありません」と書いた。
3、有権者向けの議会報告に自作の四コマ漫画を載せ、市民の声が行政に届いていない様子を描いた。

【図表1】問題となった田中まどか議員の自作漫画

果たしてこれは、議員辞職に相当するようなことなのか。田中氏を支える「みんなの会in日高」は「一般的にはセクハラ、政治資金問題、飲酒運転等の違法行為があり、議員である前に社会人として問われるような場合になされるもの」と抗議し、決議の撤回を求めた。埼玉をはじめとする全国の女性の地方議員や元国会議員約180人も、「議員活動における個人の感想・意見を発信しているにすぎない」と抗議文を提出した。田中氏はその後、決議は不法行為に当たると提訴した。