日本の地方政治はどこに問題があるのか。広島県安芸高田市の石丸伸二市長は「首長と議会がなれ合いの状態となり、政策を二の次とするような意識でいれば、政治は道を誤る。実際、安芸高田市では、私が就任するまでの5年間で赤字を垂れ流している状況だった。それは議会がただの『追認機関』となっていたからだ」という――。

※本稿は、石丸伸二『覚悟の論理』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

記者会見する安芸高田市の石丸伸二市長=2024年3月25日、広島県同市
写真=時事通信フォト
記者会見する安芸高田市の石丸伸二市長=2024年3月25日、広島県同市

仲良くしていれば政策が通る議会は不健全

「議会と対立すると政策が通らないのに、そんなにぶつかって大丈夫ですか?」

このような質問を、よく受けます。

人口約2万7000人の安芸高田市ですが、今や全国メディアでもたびたび取り上げられるようになりました。特にネットで話題になり、時には炎上し、劇場型政治と揶揄されることもあります。

議会とそんなにぶつかって大丈夫? と質問されるのは、多くの人が「議会を敵に回すとマズイ」「議会に従わないと、政策に対して一方的な反対を受けるだろう」と考えている証です。逆に言えば「市長が議会に大人しく従っていれば、議会は政策を通してくれる」と思われていることになります。

でも考えてみてください。

仲良くしていれば政策が通る議会など、極めて不健全ではないでしょうか。

簡単にこれまでの経緯を説明しましょう。

発端は就任直後の2020年9月、市議会でいびきをかいて居眠りする議員の姿を目の当たりにし、X(当時はTwitter)上で投稿したことでした。この投稿をめぐる議会との応酬が、全国的に大きな話題となりました。

全国的な話題となった「恥を知れ!」発言

2022年6月10日の市議会では、「居眠りをする、一般質問しない、説明責任を果たさない。これこそ議会軽視の最たる例です。恥を知れ! 恥を! ……という声があがっても、おかしくないと思います。どうか恥だと思ってください」と発言しました。特に「恥を知れ! 恥を!」の部分が注目され、こちらも全国的な話題となりました。

そもそも地方自治体では、首長と議会議員をともに住民が選挙で選ぶ「二元代表制」という制度をとっています。この制度下では、市長が提案した予算や条例などを実施するには、議会の議決を受ける必要があります。ともに市民の代表である市長と議会議員が、議論を重ねて自治体運営にあたることができる仕組みです。

だから市長と議会が対立することは、本来のあるべき姿と言えます。──ただし互いに正当な主張をし、対話できる関係であるならば。

当選後わずか1カ月の私にもわかるくらい、目の前の議会が機能不全に陥っていることは明白でした。主張は根拠を欠き、説明責任が果たされていない。そこに、居眠りの問題。

さすがに私の頭にも「この状態で居眠りを指摘したら、ひょっとしたら議会から感情的に反発され、これから自分の提案が通りづらくなるかもしれない」という考えがよぎりました。