「議会ともっとうまくやれ」は間違っている

このように考えてみると「市長と議会は仲良くするべき」という意見が的外れなことはわかるでしょう。

対立しない市長と議会では、二元代表制が正しく機能していないということになります。

アクセルがブレーキと癒着してしまっては、いざというときにブレーキが踏めなくなります。水面下で根回しが行われて、政策の意思決定がされていくような構造では、市民は、本当にその政策が市民のためになっているのか、確かめようもありません。

だから、記録に残らない形での合意形成、いわゆる根回しは害悪だと私は思っています。

ときどき「もう少しバランスを取ってはいかがですか」と言われますが、その「バランス」とはチェック・アンド・バランスのことではなく「議会ともうまくやって政策を通してはどうか」の意味です。その発想が、間違っているのです。

石丸伸二『覚悟の論理』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
石丸伸二『覚悟の論理』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

議会での居眠りも見逃し、褒めておだてて機嫌を取っておけば、首長の提案が通る。

公の記録に残らないところで、事前に根回しをしておけば、議論せずとも賛成してもらえる。

多くの地方自治体でそんなことをやっているんです。そのほうが楽だから。

仲良くしておいたほうが簡単だから、なれ合いで政策を通す。そんな、政策を二の次とするような意識でいれば、政治は道を誤ります。

実際のところ安芸高田市では、私が就任するまでの5年間で赤字を垂れ流している状況でした。それは議会がただの「追認機関」となっていたからです。財政危機を把握していたのにもかかわらず、議会はただの一度も決算不認定をしませんでした。持ちつ持たれつ、なれ合いの状態になっていたことがわかります。

あるべき対立がないことが、大きな問題

また、対立が必要なのは市長と議会の間だけではありません。政治と、それを監視する立場のメディアも対立構造であることが重要です。しかし地方紙と地方政治の間には、妙な持ちつ持たれつの関係があります。ここにも長年の関係からなれ合いが生じてしまっているのです。

メディアが監視機能を果たさないと、政治とカネの問題に再びつながる可能性があります。

二元代表制は本当に機能しているのか。地元メディアは本当に中立の立場で報道しているのか。対立という問題ではなく「本来対立すべきものが、対立していない」という問題が起きていないか。

これは安芸高田市だけではなく、多くの地方自治体で共通して起きていることです。

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