山梨県は、富士山の環境保護対策の一環として、今夏より登山客から一律2000円の入山料を徴収することを決めた。一方で、静岡県には目立った動きはない。ジャーナリストの小林一哉さんは「富士山頂の所有権を巡る経緯を鑑みれば、静岡県側でも入山料を徴収することは可能だ。リニア問題で口酸っぱく環境保護を訴える川勝知事はなぜ動かないのか」という――。
山梨県が「入山料2000円徴収」を決定
山梨県議会は3月4日、富士山の環境保全を目的に長崎幸太郎知事が提案していた、登山客から一律2000円を徴収することや、人数制限などを行うことなどを盛り込んだ条例案を全会一致で可決した。
富士山は国際自然保護連合(IUCN)から世界で最も危機的な国立公園の1つとされ、その過剰利用の改善が求められてきた。
コロナ禍以後、弾丸登山など富士山の頂上に押し寄せるオーバーツーリズム(観光公害)がさらに顕著になっているだけに、山梨県の初の試みは世界中から注目されるはずだ。
静岡県は「徴収はできない」と消極的
山梨県の富士山保全条例の可決を受けて、同じく富士山登山道を持つ隣県の静岡県の県議会文化観光委員会でも、桜井勝郎県議(無所属)が「なぜ、静岡県でも入山規制ができないのか」とただした。
担当の富士山世界遺産課は「山梨県の場合、県有地である吉田口登山道5合目に『ゲート』を設けて、通行料として2000円を徴収する。静岡県の場合、富士宮口、御殿場口、須走口の3つの登山道とも林野庁の管理する、国有地である。県有地ではないから、山梨県のような通行料は徴収できない。現状では静岡県では入山規制を行うことはできない」と回答した。
これに対して、桜井県議は「富士宮市にある富士山本宮浅間大社、お浅間さんと協力すべきだ」とこれまでの県の対応を改めるよう求めた。
いったい、どういうことか?