川勝知事のリニア妨害によって静岡工区の着工が先送りになっている。膠着を打破するにはどうすればいいのか。ジャーナリストの小林一哉さんは「妨害にはどんな手も使う川勝知事だが、『法には則る』と言っている。その言葉を信じるならば、JR東海は河川法に基づく行政手続きを進めるべきだ」という――。

リニア問題が膠着状態のままでいいのか

昨年12月から新年早々に掛けて、川勝平太・静岡県知事がリニア問題に関するデタラメ発言を続けたことで、JR東海は1月24日、「知事発言の事実誤認」を指摘する異例の記者会見を開いた。

1月29日の会見で「事実誤認」を否定する川勝知事(静岡県庁)
筆者撮影
1月29日の会見で「事実誤認」を否定する川勝知事(静岡県庁)

「事実誤認」の指摘に対して、川勝知事は「JR東海が公の場で出したデータを基に発言している。事実認識は誤っていない」と真っ向から反論した。

川勝知事のデタラメ発言を見れば、リニア問題の解決への道のりはあまりにも長く、ことし1年も相変わらず膠着こうちゃく状態が続くと関係者の多くがあきらめ顔になっている。

何よりも政府がリニア問題に関与して5年目を迎えたが、川勝知事のデタラメ発言に手をこまねいて、何らの解決策を出せない状態が続いているのだ。

結局、この難局を打開するためには、当事者であるJR東海がリニア問題への解決に向けて真っ向から対応するしかない。

いったい、JR東海は何をどうすべきなのか?

開業に影響が出ないよう政府も関与を表明したが…

まず、政府の関与から振り返る。

2019年7月5日、川勝知事は名古屋市を訪れ愛知県の大村秀章知事とリニア問題の解決策について会談した。

その席で、川勝知事は「大井川の流量減少問題が解決されない限り、着工を認めない」として、東京・品川―名古屋間の2027年開業は「見直すべきであり、現実的ではない」と発言した。

これで、静岡工区の早期着工を求める大村知事らの声をかき消してしまった。

ただ、川勝、大村の両知事との間で、「国の関与が必要」という認識では一致した。

この会談を受けて、翌日の6日、菅義偉官房長官(当時)が「(2027年開業)予定に影響が及ばないよう、両者(静岡県、JR東海)の間で客観的な議論が進むよう国土交通省として必要な調整を行う」と政府として関与する方針を表明した。

菅長官の表明を受けて、国交省事務方トップの事務次官が10月に静岡県庁を訪問したが、川勝知事にいいようにあしらわれただけだった。