リニア妨害を続ける川勝知事を静岡県民はどう見ているのだろうか。ジャーナリストの小林一哉さんは「地元メディアは川勝知事の『イメージ戦略』に一役買ってしまっている。これでは川勝知事のウソにだまされるのも無理はない」という――。

無責任な「リニア問題は2037年までに解決すればいい」発言

静岡県の川勝平太知事は1月4日の新年会見に続いて、15日の定例会見で、JR東海がリニア中央新幹線の開業時期を「2027年」から「2027年“以降”」としたことに触れ、「(リニア開業は)2027年のくびき(縛り)がなくなった。2037年がデッドライン(最終期限)」だから、「南アルプス保全は、2037年のリニア全線開通までに解決すればいい」と論理を飛躍させるお得意の無責任な発言を繰り返した。

ことし1月15日の川勝知事の会見(静岡県庁)
筆者撮影
ことし1月15日の川勝知事の会見(静岡県庁)

知事の任期中(2025年7月まで)はリニア静岡問題を解決しないと宣言したようなものである。

来年6月の県知事選で5期目当選を果たせば、さらに2029年7月まで静岡工区の着工は棚上げされる可能性が高くなってしまった。

こんな話を聞けば、早期の開業を待ち望むリニア沿線の人たちの胸の内は、憤懣やるかたないだろう。

川勝知事のウソをそのまま掲載する地元メディア

ところが、県政トップによるこのとんでもない発言は、1月1日付静岡新聞をはじめ、新春恒例の各メディアによる知事インタビュー記事でそのままに取り上げられていた。

『全線開業から見たら名古屋までも部分開業。27年以降で期限が示されているのは37年の全線開通。南アルプスの問題は37年までに解決すれば目的は達成できる』(1月1日付静岡新聞)

『リニアの東京・品川―名古屋間の開業が「2027年以降」に変更された。革命だと思っている。27年以降というのは、それより延ばしてはいけないのが37年。言ってみれば、37年まで南アルプスは救われた。南アルプスはほっとしている』(1月1日付中日新聞)

『12月に(JR東海が開業時期を修正して)計画を変えたじゃないですか。南アルプス(を巡る環境問題)を27年までに解決しなければいけなかったわけですが、それが27年以降になった。だから、JR東海が南アルプスの問題を解決できないと気がついたことが非常に大きな節目(成果)だ。(知事として仕事をして)JR東海の方針が変わったんです。南アルプスさんの言葉を借りると「ここで一息つけたなあ」』
『完成目標は37年だから、そこまでに南アルプスの問題を解決すればいい』(1月3日付毎日新聞)

「部分開業」「2037年がデッドライン」などの発言はJR東海からすれば、正確ではないどころか、全く間違った情報がそのまま各紙の読者に届けられたことになる。

それどころか、「2037年まで南アルプスは救われた」「南アルプスはほっとしている」などあたかも南アルプスの環境保全を最優先に、「知事として仕事をした」などと持ち上げたかっこうとなり、リニア工事にストップを掛ける川勝知事のイメージ戦略に各紙はひと役買ったことになる。

実際は、すべて川勝知事の勝手な解釈を基に「嘘」で塗り固められている。新聞各社は、まんまと川勝知事の思うつぼにはまってしまったのである。

インタビュー記事だからか、川勝知事の「嘘」を判別して、発言のどこがおかしいのかをチェックする機能が全く働いていない。

「真実」を追求するはずの新聞記者たちが、川勝知事の「嘘」には手も足も出ないようだ。