物議を醸した川勝知事の「腹案」発言

川勝知事の「嘘」に翻弄されたと言えば、もうひとつびっくりするようなインタビュー記事があり、こちらはもっと具体的である。

2019年7月9日付中日新聞インタビュー記事で、川勝知事は「リニア開業と南アルプス保全を両立させる腹案がある」と自信たっぷりに明かしたのだ。

同年7月26日の記者会見で、このインタビュー記事が問題となり、幹事社が「リニア開業と南アルプス保全を両立させる腹案について具体的に何か教えてほしい」と質問している。

これに対して、川勝知事は「工事をするのはわたしではない。工事する側が南アルプスに傷をつける。中下流域まで影響を及ぼす。こうしたことに対して、JR東海からしっかりと説明される義務がある。まず、それを聞いてからだ」と逃げた。

さらに、川勝知事は、作業道となる静岡市管理の「東俣林道」整備とともに、当初、JR東海が提案した静岡市道閑蔵線トンネル整備を進めることに言及した。

このため、「知事の『腹案』と道路整備の関連はあるのか」と問われたが、これも「関連はない」と素っ気なく否定しただけだった。

政治家の力量を見せつけるためにウソをつく

このあとも、記者たちは知事の腹案が「地域貢献という補償ではないか」などと聞いているが、川勝知事はことごとく否定した。

中日新聞インタビューでの思わせぶりな「腹案」発言は、いったい何だったのか、わからずじまいで、会見を終えると、「腹案」発言そのものがうやむやになって消えた。

どう考えても、約4年前の「腹案」と昨年10月の「解決策」の発言は全く同じように見える。

静岡工区着工の権限を握る知事が、政治家としての力量を見せつける意図で、「腹案」や「解決策」という重要なキーワードを使ったのである。

筆者自身、2019年7月当時、川勝知事の「リニア開業と南アルプス保全を両立させる腹案がある」発言を信じて疑わなかった。

南アルプス保全にそれほど川勝知事は強い関心を示しているのか、と驚いた記憶がある。