金の代わりに健康な体は絶対必要

現在の野原さんはフリーライターの傍ら、衆議院議員会館で小学生の国会見学の案内や秘書の手伝いなどのバイトもこなす。実は肉体労働は現在のところお休み。高血圧と心臓の持病に加え、一昨年に卵巣に境界腫瘍が見つかり6時間の手術、さらに膵臓すいぞうの嚢胞と、病に悩まされた。今はヨガ教室に通い、酒もやめ、体調が安定したが、肉体労働はまだ自信がない。

「麻雀にハマっていた頃、ずっと座ったままタバコを1日30〜40本も吸っていたツケが回ってきたのかもしれません。お金はためなくてもいいと今でも思っていますが、その代わり、ちゃんと働ける健康な体は必要です」

膵臓の嚢胞が見つかって以来、残された時間を意識しだした。実父、母、継父、年子の弟を天国に見送ったため、自分にも順番は回ってくるのはそう遠くないとも思っている。

「ディズニーランドの行列と一緒です。まだまだ先は長いなあと思っていたのに、ふと気がついたら自分の番はもう目の前。だとしたら、一番心血を注いだライター業に、再び向き合うべきだと思っています」

その一つはオバ記者としての自叙伝。貧しさも、住み込みバイトも、麻雀依存も、病も人生に起こることはすべてネタ。お金はたまらなかったし、随分回り道もしたが、今まで見聞きしたことすべては長く続けてきた物書きの仕事に帰結すると思えば、納得がいく。

野原広子さん
撮影=東野りか

今の収入はライター業が新入社員の初任給ほど、衆議院議員会館でのバイトは年に数十万円ほど。66歳としてはまあまあの収入だが、都心部に家を借りているので家賃が高い。

東京駅近くのビルにある、大好きな電車を眺められる月額2万2000円のネットカフェを仕事場にしている。年収からすれば、郊外のもっと安いアパートに引っ越しし、リーズナブルなカフェを仕事場にしたほうがいいかもしれない。

しかし、自分を追い込まないと仕事ができないという気質は変わらない。あのヒリヒリとした思いが野原さんの書く原動力にもなっているのだから。

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