英語子育てでも日本語の習得に不安なし
未就学時から英語教育に力を入れる場合、「母語のインプットが不足しないだろうか」と不安を覚える親は少なくない。まゆみさんはどう考えていたのか。
「外国に住んでいるのなら母語を失う不安がありますが、日本にいれば日本語にはいくらでも触れられます。家を一歩出たら、ずっと日本語のわけですから。海外ではバイリンガル、トリリンガルは普通のことなので、英語を習うことで母語に支障が出るかもという心配はしたことはないですね。実際、たつやは高校生まで敬語がおぼつかなかったですけど(笑)、夫が注意したり、経験を重ねるうちに問題なくなりました」
英語を楽しく学ぶのに必要なこと
たつやさんは神戸市の制度を利用し、インターの3カ月の夏休み(6〜8月)期間に日本の小学校に体験入学していた。特にトラブルなく楽しそうに過ごすたつやさんを見て、星名さんが「私も日本の学校に行きたい!」と言うように。ところが、その矢先に神戸市の方針が変わり一時受け入れがなくなってしまった。それでも星名さんの日本の学校への熱が冷めなかったことで、小学6年生から中学2年生の1学期までを、星名さんは日本の公立学校で過ごしたそうだ。まゆみさんは、その間に星名さんが話していたある話が印象的で今も覚えているという。
「星名いわく、小学校までは英語が楽しかったのに、中学に入った途端、英語が嫌いになった子が多くいたと。英語のレベルが一気に難しくなって文法など学ぶ内容が多くなったからだと思うのですが、星名はそれ以上に『なぜこれを学ぶのか?』『この知識があると、どういうふうに世界が広がるのか?』という学びの本質を親も先生も伝えていないから、みんな前向きに学べないのではないかと分析していました。目的が見えないなか、難しいことをしろ、とだけ言われたら、誰でもイヤに思うよねと。幼かった頃の私が『英語ができると友達ができるんだ』と父に興味づけしてもらったように、“学びの先”には素晴らしいものがあることを示してやることが子供には大切。それが親や教師の役目なのだと、星名の話を聞いてあらためて感じました」



