タワマンの豪華な設備は賑やかしにすぎない

タワマンをこしらえるデベロッパーやゼネコンは、こうしたからくりを熟知しています。すなわち、自分たちは金融商品を作っているのであって、豪華な共用部ロビーなどしょせんお飾りだし、フィットネスルームやキッチンスタジアムなどは賑やかしにすぎないということを。

買う人たちに買うための理由さえあればよく、マーケットで値上がりが続いている限り、販売には何の問題もありません。彼らは売れてしまえば仕事としておしまいです。顧客が買ったその先には興味を抱く必要もないし、実際、気にもしていません。

しかし、うまいことばかりが続く金融商品など存在しないことは、聡明な人であれば気づくでしょう。

相場が下がり始めたら一巻の終わり

まず、この商品は当然ながら、元本保証ではありません。また、売却価格が相場に左右されるのは株式と同じでありながら、株式のように即日で売却(利確または損切り)できるほどの流動性はありません。相場が悪くなると一斉に売りに出されるのは株式と同じですが、商品単価が高いため売りづらいのです。

つまり相場が下がり始めると、あれよあれよと下がっていくのを呆然と見つめることしかできません。さらに、この商品は年数(築年数)を経過すると、どんどん劣化していきます。建物は古くなり修繕費用がかさみますし、周囲に新しい建物(商品)がたくさん出てくるため競合が激化し、当初の「レアもの感」はすぐに失われます。

このように、タワマンの商品価値を維持するのは意外と難儀なのです。また自分が住んでいれば、保有期間中の運用益は得られないうえに、管理費と修繕積立金という投資信託であれば信託報酬的な費用は毎月かかります。

さらに、相続での節税効果については本書で詳述しますが、税務当局が一定の制限を設けるようになりましたし、今後さらに規制が強化されるリスクも内包しています。そもそも、この節税効果には所有者である被相続人本人が死ななければ享受できないという、まったくもって理不尽な条件が前提になっています。