なぜタワマンは人気なのか。不動産事業プロデューサーの牧野知弘さんは「相場が上がり続けているため、金融商品として考えると非常にお買い得だ。しかし、タワマンの商品価値を維持するのは意外と難しく、購入するリスクも忘れてはいけない」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、牧野知弘『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。

東京のタワーマンション
写真=iStock.com/MASA Sibata
※写真はイメージです

「ウォーターフロント」に建つタワマンのリアル

お客様との面談で、東京の江東区豊洲のタワマンにうかがう機会がありました。

このタワマンを事前に調査したところ、数年前の販売時の平均価格は坪単価450万円、上層階で専有面積100m2を超すプレミアム物件になると、坪単価は600万円を超えていました。1戸あたり、優に2億円を超えます。中層階、低層階でも20坪(66m2)で9000万円前後ですから、一般国民には手が届きません。

さて、現場にすこし早めについて周囲を実査しました。豊洲近辺はかつてIHI(石川島播磨重工業)のドックなどがあり、古くからの街並みが形成されているわけではありません。緑も少なく、見方によっては人工的でやや殺風景に見えます。

世間では海が近く、「ウォーターフロント」などと礼賛されますが、しょせん借景にすぎませんし、きれいとは言えない海で泳げるわけでもありません。潮風は防ぎようがないため、建物寿命などに影響が出ます。

埋立地ならではの災害リスクを忘れてはいけない

タワマンの近くにあるのが、いかにも取って付けたような公園、それも潮風の影響でひしゃげたような樹木が多いです。ショッピングモールは大手流通企業や不動産会社が運営する、どこにでも見られるような店舗ばかり。その店舗に並ぶ商品も、通勤が主体となる生活を反映してか、生活必需品が中心です。

災害もちょっと心配です。埋立地では大地震が発生すると津波はもちろん、建物自体の安全性は確保されても、周辺土地の液状化が起こることは、かつての東日本大震災発生時において証明済みです。エレベーターが停止して40階まで階段の上り下りで死にそうになった、ゲリラ豪雨による洪水で電気室が浸水した……などなどタワマンにまつわる危険性の指摘は枚挙に暇がありません。

また、上層階と低層階の住民格差などが題材になった「タワマン文学」まで、巷には蔓延しています。このように、湾岸エリアを居住環境として考えると、お世辞にも優良とは言いがたいものがあります。それでも、売れ行きは好調のようです。なぜでしょうか。