勝っても負けてもファイトマネーは3万円

YouTubeなどで格闘技系のコンテンツはとても人気がある。腕自慢の素人が「夢をつかむために、プロになりたい」と宣言するのも恒例だ。しかし、ほとんどの「プロ格闘家」の懐事情は厳しい。本稿では、筆者の友人で、日本ランキング2位の実績をもつ、プロキックボクサーの児嶋真人氏の例を紹介したい。

児嶋氏は、キックボクシング団体JAPAN KICKBOXING INNOVATION(以下INNOVATION)でプロデビューし、破竹の勢いで4連勝を飾った。その後Sフェザー級2位まで上り詰め、同階級のチャンピオンとは3度も対戦した。いずれも僅差の判定負けを喫したが、日本一になってもおかしくない実力の持ち主だった。

プロのキックボクサーの収入は「ファイトマネー」「手売りチケットの販売手数料」「スポンサー収入」の3つ。スポンサーを見つけられる選手はごくわずかで、主な収入減は2つになる。

プロキックボクサー時代の児嶋真人さん
画像提供=児嶋氏
プロキックボクサー時代の児嶋真人さん

得られる報酬は年間で約20万円

ファイトマネーは、児嶋氏の所属団体の場合、3万~4万円ほど。通常の試合でもチャンピオンを決める大会でも、勝敗によるボーナスはなく、買っても負けても金額は変わらない。

チケットの販売手数料は、選手自身が手売りした分の40%をもらえる仕組みだ。チケット代は約7000円なので、1枚につき3000円ほどの収入になる。なお、一般客のチケット代は「運営費用に回す必要がある」とされ、選手の取り分はない。

チャンピオンを決める大会は1000名以上の観客が集まることもあるが、児嶋氏はどんなに頑張っても10~20枚ほどしか手売りできなかった。お金を払ってまで格闘技を観たいと思う知人は少なく、さらに児嶋氏は茨城出身なので、東京の試合に地元の友人を呼びにくかった。

50~100枚ほど手売りする選手もいるが、大半の選手は児嶋氏と同じくらいしか売れない。1試合の報酬は、ファイトマネーと合わせても多くて8万円ほどだ。

通常の試合はチャンピオンを決める大会より規模が小さいため、観客は200~400人。チケットは数枚しか手売りできない。ファイトマネーと合わせても報酬は4万~5万円だ。

プロのキックボクサーは年に3~4回の試合数が一般的なので、得られる収益は年間で約20万円。ジムへ支払うお金が年間12万円、プロライセンス更新が年間5000円かかるため、手元には数万円しか残らない。