ランキングの6~8位が空位

なぜプロのキックボクサーはこれほど薄給なのか? その理由の一つに、団体数の多さが挙げられる。

「キックボクシングの団体は小さいものを含めると20を超えます。僕は2021年に現役を引退してからレフェリーを務めているので、この業界に10年身を置いています。それでも把握できないほどの数です」(児嶋氏、以下同)

団体数が多いことによる弊害は3つある。

1つ目は、選手が分散してしまうことで、選手のレベルが上がりにくいことだ。

児嶋氏はINNOVATIONのSフェザー級2位だったが、当時は6位、7位、8位が空位だった。ランキングに入る条件は、INNOVATIONが規定する試合数をこなしていること。つまり、その基準を満たした選手が、当時は1~5位、9~10位の7人しかいなかった。

20を超える団体の中でもINNOVATIONは主要団体なのだが、それでも基準をクリアしている選手は少ない。団体数が多いことによって選手が分散しているからだ。

ランキングに入りたくても入れない選手がたくさんいる状況に比べると、競技のレベルはどうしても上がりにくい。

「僕には格闘技のセンスはない。だから逆に強くなれた」と話す児嶋氏
画像提供=児嶋氏
「僕には格闘技のセンスはない。だから逆に強くなれた」と話す児嶋氏

キックボクシングの団体数は20超

2つ目は、試合の面白みが薄れてしまうことだ。

キックボクシングの各団体が、毎週のようにあちこちで試合をおこなっているので、ファンが分散し、会場は閑散としてしまう。さらに、団体内で同階級の選手が少ないため、同じ相手と何度も対戦することもある。

そうなると選手もモチベーションを上げにくく、試合が面白くなくなってしまう。

3つ目はチャンピオンの価値が下がってしまうこと。

例えば、ボクシングの主要団体はWBA、WBC、IBF、WBOの4つだけだが、それでも、数が多い、チャンピオンの価値が下がるという声がある。団体数が20を超えるキックボクシングの場合は、なおさらだ。試合の価値はそのまま観客動員数につながる。

団体数が多いことによって生じる3つの弊害によって、固定ファンが付きにくい状況を生み出している。それがファイトマネーの低さにつながっているのだ。