見直された「寄付行為」でも理事長の権限は大きい

記者会見で久保利氏が読み上げた「今後の対応及び方針」では、ウチのことはウチで収めるという「ムラ社会」の組織や、「秘密主義」、学外者を含む組織に対して必要な情報を全く提供しようとしない「排外主義」などがあったとしている。そのうえで、「方針」では理事長のあり方としてこう書いている。

「理事長の権限及び責任を明確にし、業務執行理事へのガバナンスを強化させる仕組みを設け、理事長がガバナンスをより強化させる仕組みを設けます。また、理事長就任後の業績評価制度の見直しや理事長選考委員会の在り方の再確認も含め、法人ガバナンスを強化します」

田中前理事長の不祥事をきっかけに見直した「寄付行為」でも理事長の権限は大きい。選任方法や任期などは変わったが、「理事長は、この法人を代表し、法人の業務を総理する」「理事長以外の理事は、この法人の業務について、この法人を代表しない」といった唯一絶対の権限規定は田中時代と同じだ。また、理事の中から「理事長の推薦により理事会の議を経て常務理事となる」という、事実上理事長が常務理事を選ぶ権限などは、規定上は変わっていない。

人けのない会議室に書類とペンだけが置かれている
写真=iStock.com/hxdbzxy
※写真はイメージです

学長と3人の副学長の発言力が大きくなっていた

ところが、「林理事長はどうも学長らの教学部門に遠慮があるようだ」と日大関係者は言う。理事会の構成人数は「27人以上36人以内」だったものを「14人以上24人以内」に減らされ、日大以外の学外者が増えた一方で、「副学長」を新設したため、学長と3人の副学長の発言力が大きくなり、理事長や理事会による「教学」への監督が弱くなった大きな要因だろう。田中前理事長による不祥事への反省で、理事長の暴走を防ぐことを最優先し、結果的に学長と副学長の力が増すことになったのだろう。今回の不祥事を受けて、副学長のあり方など寄付行為が再度見直されることになるのだろう。

「もはや一刻の猶予もできません。今、改善・改革を行わなければ本法人は、再生・復活の機会を失い、先人が永年にわたり築きあげた価値などを致命的に喪失することとなります」

田中前理事長の不祥事を機にガバナンスを見直した日本大学で、繰り返される不祥事は、ガバナンスがまだまだ脆弱ぜいじゃくなことの証明でもある。2年前に久保利氏らのガバナンス改革会議が示した強力なガバナンス体制を、少しでも自主的に導入していこうという動きが広がっていくことになるのだろう。多くの学校法人が、今後の日大の再改革の行方を固唾かたずを飲んで見守っている。

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