記者会見に現れた「ド派手なスーツの強力な助っ人」
「何合目と言うより富士吉田の駅に着いたくらい。まだバスにも乗っていない」
12月4日に開いた記者会見で、日本大学の改革の進行状況を「いま何合目か」と問われた林真理子理事長は、富士山に例えてまだ麓の駅だと答えた。就任から1年以上過ぎたにもかかわらず、改革は進むどころか、再び発覚した不祥事への対応に追われている。不祥事の淵に沈んだ日本大学は再生・復活できるのだろうか。
記者会見にはこれまで登場しなかった強力な「助っ人」が登場した。久保利英明弁護士。ド派手なスーツと真っ黒に日焼けした風貌で知られるガバナンス問題の第一人者である。黒に幅広の白いストライプが入ったこの日のスーツは、長年、久保利氏を取材してきた筆者から見ると、極めて地味な出で立ちだったが、それでも、ネット界隈やテレビのワイドショーの人々は度肝を抜かれたようで、一気に話題をさらっていた。
派手な出で立ちは自らを奮い立たせる「戦闘服だ」と言い続けてきた久保利氏は、常に「不正」に立ち向かってきた。防弾チョッキを備えての総会屋と対峙するなど、その「正義感」は正真正銘、筋金入りだ。そんな闘う弁護士に「林真理子さんを助けてやってくれ」といくつものルートで依頼が飛び込んだという。林氏の著書を刊行する出版社の幹部や、久保利氏が顧問を務める企業の創業者、芸能人、そして日本大学の監事を務める弁護士からも連絡がきた。それほどに林理事長が改革に苦戦して追い詰められている様子を周囲が心配していたのだろう。
「久保利弁護士の議長就任を文科省が了解したのは意外」
今年8月、アメリカンフットボール部員が寮で大麻を所持していた容疑で逮捕されたのを受けて、日大は「第三者委員会」を設置した。その第三者委員会が10月30日に報告書を日大に提出。管理運営体制の再構築など改善計画を策定する「第三者委員会答申検討会議」を設置した。その会議の議長に久保利氏を迎えたのだ。
アメフト部は2018年の危険タックル問題に次ぐ不祥事で、その後の田中英寿前理事長による乱脈経営から脱却を図ろうとしていたまさにその最中に起きた。ガバナンスの不全が再び明らかになったわけだ。
相次ぐ不祥事で、日大は文科省の厳しい監督下に置かれている。第三者委員会の設置は文科省の行政指導を受けたものだった。当然、その後の検討会議の設置も日大は文科省にお伺いを立てている。「正直、久保利弁護士の議長就任を文科省が了解したのは意外でした」と関係者は語る。というのも、久保利氏と文科省には因縁があったからだ。