文科省からすれば「過激な」ガバナンス体制を求める危険人物

2021年7月、文科省は「学校法人ガバナンス改革会議」(座長・増田宏一元日本公認会計士協会会長)を設置した。久保利氏はその会議の中心メンバーだったのだ。ちょうど田中理事長が逮捕されるなど日大の不祥事が噴出しているタイミングと重なったため、大学のガバナンスのあり方が大きく関心を呼んだ。そんな流れの中で、12月8日にはその会議が報告書をまとめる。その内容は、公益財団や社会福祉法人など公益法人の仕組みに沿った厳格なガバナンス体制を求めるものだった。

これに私学経営者らが猛烈に反発。自民党の文教族政治家らに働きかけて、改革案を骨抜きにしたのだ。文科省からすれば「過激な」ガバナンス体制を求める危険人物が久保利氏だった。それにもかかわらず久保利氏に日大改革を委ねることに文科省が踏み切ったことを、経緯を知る大学関係者は驚きを持って見ているのだ。

しかも、会議の設置を仕掛けた塩崎恭久元厚生労働相の強い意向で、報告書の作成には文科省の役人は一切関わっていないとされる。一説には久保利氏の事務所の弁護士がボランティアで作成したとも言われているのだ。文科省からすれば、久保利氏は敬して遠ざけたい人物に違いないとみられていたのだ。それが、久保利氏の議長就任を渋々認めるどころか、むしろ歓迎したというのだ。

弁護士事務所の机の上の正義のスケールと法律書
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私学法改正で注目されている日大の行方

私学法の改正で2025年から学校法人のガバナンスが大きく変わる。全国の大学はいま、定款に当たる「寄付行為」をどう変え、どんなガバナンス体制にするかを検討している真っ最中だ。改正私学法では、各学校法人が寄付行為で定めれば、多くでほぼ現行通りの体制を維持できるように「骨抜き」になった。学校法人自身の改革姿勢によって寄付行為はいかようにでも書ける形になったのだ。例えば、理事の選出方法などは法律では明確に示されず、各大学に自由度がある。

そんな中で、注目されているのが日大の寄付行為の行方だ。日大は田中元理事長の不祥事を受けてガバナンス体制を見直したが、第三者委員会の調査報告書では、一定の改革が行われたものの、今回の不祥事で理事会への報告がなされなかったり、遅れたりしたことなどガバナンスが機能しなかったことが問題視されている。つまり、経営を行い教学を監督する理事会の機能が十分に働く仕組みになっていなかったとした上で、経営層によるガバナンスを機能させるためには独立性のある理事、監事が必要だと結論付けている。