がん保険には入ったほうがいいのだろうか。オフィスバトン「保険相談室」代表の後田亨さんは「保険は『めったに起きないこと』に備えるもの。『2人に1人ががんになる』のであれば、だからこそがん保険に入る必要はない」という――。(第2回)

※本稿は、後田亨『この保険、解約してもいいですか?』(日経BP)の一部を再編集したものです。

がんはほとんど遺伝しない

【登場人物】
オフィスバトン「保険相談室」代表
後田亨

お客様
五十嵐有司:40歳 会社員
五十嵐美香:40歳 パートタイマー
子供(4歳)1人の3人家族

「医療保険」「外貨建て終身保険」「学資保険」など5本の保険に加入中
月々の保険料は約8万円(ドル円の為替レートで変わる)

【後田亨】ここからは「がん保険」についてお話ししましょう。まず、「がん家系」ですね。

【五十嵐有司】ええ、私のうちが「がん家系」なので、がん保険、入ったほうがいいのではないかと。

【後田】「がん家系」は、珍しいものでなく、多くの人に当てはまるだろうと思います。次のグラフをご覧ください(図表1)。公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計2023」から、数字を引いています。一生涯でがんにかかる人の割合は、男性が65.5%、女性でも51.2%ですから、2人に1人より多い計算です。それなら、家族や親族の中にがんにかかったことがある人やがんで亡くなった人が何人もいても不思議ではないでしょう。私の親族も半分くらいががんで亡くなっていますけど、確率的に妥当な結果かと受け止めています。

【有司】なるほど。

【後田】ただ、遺伝によるがんは数パーセントらしいです。

【美香】えっ、本当ですか?

【後田】はい。医師や研究者が書いた書籍をいくつか読めば、「遺伝的要因で起こるがんは、とても少ない」ことが確認できます(*1)

【有司】それは意外ですね。

【後田】遺伝より、生活習慣などの影響が大きいようですね。家族で食事の好みが似ているとか、ありそうですし。

【有司】なるほど、そんな気もしますね。

(*1)全国健康保険協会「全国健康保険協会管掌健康保険 現金給付受給者状況調査報告」(平成24年~令和3年度)