保険で対応すべきことの“3つの条件”

【後田】冷静になるには「そもそも、がん保険って、存在そのものが怪しくないか?」と自分に問いかけるのもいいと思います。

【美香】どういうことでしょうか?

【後田】「2人に1人ががんになる時代です」「がんは他人事ではありません」みたいな広告に接したことってないですか?

【美香】それは、あるような気がします。他人事ではないから、がん保険が必要かなと思います。

【後田】そこなんです。医療保険を見直す際にお伝えした、原理原則を思い出してください。保険で備えるのに向くことには、3つの条件があります。

(1)めったに起きないこと
(2)自己資金では対応できない大金が必要になること
(3)いつ起こるかわからないこと

この条件に照らすと、明らかに変でしょう? 保険の利用がふさわしいのは「めったに起きないこと」です。「2人に1人に起きること」は、保険に向きません。保険は「他人事としか思えない事態」に向いているんです。発生率が高い事象に備えるには、お金をたくさん集めておかないといけませんよね。だから、安い保険料で大きな保障は無理だというのは、子どもにもわかる理屈で、時代が変わっても変わりようがありません。それなのに、がん保険は、がんの発生率が高いことを理由に加入を勧められます。

【有司】確かにそうだ。

頻繁に起きることは保険で備えなくていい

【後田】だから、うがった見方をすると、私たちは、保険会社の人に甘く見られているのかもしれません。身近に感じられるがんの体験談に接した人は冷静な判断ができなくなる。だから、保険に入って安心しようとする。良くも悪くも人ってそんなものだと。この推察は当たっていなくてもいいんです。

少なくとも私の場合、こういう見方をすると、がん保険について、冷静に考え直すことができるんです。なので、心がざわつくようなことがあったときは、「2人に1人ががんになる」という言葉に戻るようにしています。

【有司】なるほど、そう言われてみると、がん保険って、怪しいですね。ただ、今のお話を聞くと、保険会社ががん保険を売るのは、無謀な気がしてきます。2人に1人に保険金を払っていたら、利益が出ないんじゃないですか。