誰にでもお金で失敗する可能性はある。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「努力家でお金への意識も高かったある独身女性の場合は、ひとりの男性との出会いによって貯金が激減してしまった。大きな変化が起きたときやメンタルが弱っているときは要注意だ」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

カップル
写真=iStock.com/franckreporter
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波多野さん(仮名/49歳)のケース

年収 1200万円(退職前)
貯金 3000万円(退職前)
退職金 1000万円

年収1200万円、貯金額3000万円の40代女性

大きな変化にぶち当たったりメンタルが弱っていたりすると、どんなに自立した人でも判断が鈍ることがあります。今回は、エリート街道を走ってきた独身女性が、コロナ禍などをきっかけに「ヒモ男」に貯金を吸い取られてしまった事例をご紹介します。

古くからのクライアントである波多野愛さん(仮名/49歳)は、私が知る中でも一番の努力家でした。団塊ジュニア世代である彼女は「常に競争にさらされてきた感覚」と話すだけあって、小学生の時のクラス数は10クラス(!)で、熾烈しれつな受験戦争や就職活動を経験してきたそうです。また、3姉弟の長女かつ、両親が幼い時に離婚したこともあり、「私が家庭を守らなくては」という責任感も強い女性です。猛勉強の末にストレートで国立大学に合格し、新卒で大手商社に入社。20年間、脇目も振らずキャリア街道を歩んでいました。

40代前半の時の彼女の年収は1200万円ほど。お金を育てることにも意識的で、株の運用も長く行い、貯金額は3000万円になっていました。

早期退職して「バーを開業したい」

しゃかりきに働いてきた彼女に転機が訪れたのは、42歳の時。会社の健康診断で初期の乳がんが発覚したのです。がんはごく初期のものだったので大事に至らずに済んだものの、これまでろくに有休もとらず、結婚もせず、仕事一本できた道を考え直すきっかけになったそうで、45歳の節目に早期退職を決意。その際、彼女から「バーを開業したい」と相談を受けました。

彼女の当時の貯金とライフスタイルからしても新しいチャレンジに問題はなさそうでしたので、ファイナンシャルプランナーとしても波多野さんの新たな門出を応援しようと、資金計画も一緒に考えました。

そうして4年前、退職金1000万円をすべて開店資金に注ぎ込み、中央線沿線の飲み屋街にこぢんまりしたバーを開店。もともとお酒が大好きでその界隈に友だちも多かった波多野さんだけに、あっという間に店は人気店に。中央線沿線の特性もあり、サブカル系のお客さんも多く、“知る人ぞ知る”店になりつつありました。