消費税が少子化問題を悪化させた
次に認識していただきたいのが、「消費税は子育て世代への負担が最も大きい」という事実である。
前述したように消費税は平成元(1989)年に導入され、この30年間にたびたび増税されてきた。少子高齢化が進んでいく時期とリンクしている。
消費税は、収入における消費割合が高い人ほど、負担率は大きくなる。
たとえば、収入の100%を消費に充てている人は、収入に対する消費税の負担割合は10%ということになる。
が、収入の20%しか消費していない人は、収入に対する消費税の負担割合は2%でいいという計算になる。
収入に対する消費割合が低い人は、高額所得者や投資家である。彼らは収入を全部消費せずに、貯蓄や投資に回す余裕があるからだ。こういう人たちは、収入に対する消費税負担割合は非常に低くなる。
では、収入における消費割合が高い人はどういう人かというと、所得が低い人や子育て世代ということになるのだ。
人生のうちで最も消費が大きい時期というのは、大半の人が「子どもを育てている時期」のはずだ。そういう人たちは、必然的に収入に対する消費割合は高くなる。
ということは、子育て世代や所得の低い人たちが、収入に対する消費税の負担割合が最も高いという現実があるのだ。
児童手当はまったく足りない
子育て世帯に対しては、「児童手当を支給しているので、負担は軽くなったはず」と主張する識者もいる。
しかし、この論はまったくの詭弁である。
児童手当というのは、だいたい1人あたり月1万円、年にして12万円程度である。
その一方で、児童手当を受けている子どもは、税金の扶養控除が受けられない。
そのため、平均的な会社員で、だいたい5~6万円の所得税増税となる。
それを差し引くと6~7万円である。つまり、児童手当の実質的な支給額は、だいたい年間6~7万円にすぎないのだ。
しかも、子育て世代には、消費税が重くのしかかる。
子ども1人にかかる養育費は、年間200万円くらいは必要である。食費やおやつ、洋服代、学用品などの必需品だけでも平均で200万円くらいにはなるだろう。
ちょっと遊びに行ったり、ちょっとした習い事などをすれば、すぐに200~300万円になる。
子どもの養育費が200万円だとしても、負担する消費税額は概算で20万円である。
児童手当では、まったく足りないのだ。
つまり子育て世代にとって、児童手当よりも増税額のほうがはるかに大きいのである。
少子高齢化を食い止めるためには、子育てがしやすいように「支給」しなければならないはずなのに、むしろ「搾取」しているのである。