この20年間、設備投資がほとんど増えていない

工場を安易に海外に移転させたのは、電機メーカーだけではない。日本の主要産業の多くが、工場や生産設備を海外に移したのだ。

それはデータにも明確に出ている。

図表5は、主要先進国におけるこの20年間の設備投資の増減を示したものである。日本は、ほとんど増えていないのだ。つまり、国内の工業生産力はほとんど上がっていないのである。

【図表5】主要先進国の国内設備投資 (2021年。2000年を100とした場合)
出所=『日本の絶望ランキング集』(中公新書ラクレ)

先進国というのは、途上国に比べると設備投資の伸びは鈍い。先進国は設備が整っているので、どうしても増加速度は落ちるのだ。その設備投資が少ない先進国と比べても、日本はひときわ少ないのだ。

この20年間、世界経済は大きく拡大し、工業生産も爆発的に増加している。にもかかわらず、日本の工業生産能力はほとんど上がっていない。日本の企業は、国内の生産設備を整えるよりも、海外に工場を建設することを優先してきたのだ。

日本から海外への投資ばかりが激増

そして日本は国内への設備投資は止まっているが、海外には盛んに設備投資を行っている。

図表6は、日本から外国への直接投資残高と、外国から日本への直接投資残高の数値である。日本から外国への投資は、外国から日本への投資の5倍以上になっている。日本は、外国との投資において大幅な「輸出超過」になっているのだ。

【図表6】日本と外国との直接投資残高(2021年末)
出所=『日本の絶望ランキング集』(中公新書ラクレ)

つまりは、日本は外国に巨額の投資をしているけれど、外国からはあまり日本に投資をしてくれていない、ということである。

日本の経常収支は、長い間黒字が続いているが、それはこの「対外投資超過」のためなのである。

そして、日本経済の大きな問題点である「国内の工場がどんどん海外に移転していく」ということも、この数値に表れているのだ。