中古車販売大手のビッグモーターをめぐり、保険金の不正請求など複数の問題が相次いで報じられている。一連の問題を同業者はどう見ているのか。『成長の原動力は会社を儲からないようにする』(プレジデント社)を出した磯﨑自動車工業(本社:茨城県ひたちなか市)の磯﨑孝会長と磯﨑拓紀社長に聞いた――。
東京で見かけたビッグモーター社のロゴ。
写真=Sipa USA/時事通信フォト
東京で見かけたビッグモーター社のロゴ。

同業者が驚いたビッグモーターのえげつない営業

――ビッグモーターの問題が連日報道されています。中古車販売業界には影響はありますか?

【磯﨑孝会長[以下、磯﨑(孝)]】当社は地域密着で地道に商売をしてきましたので、実際のところそれほどの影響はありません。ただ、この問題が業界の信用を失わせることになったのは事実です。中販連(日本中古自動車販売協会連合会)が業界の信頼向上に向けて中古車販売時に支払総額を表示するルールづくりに取り組み、この10月にそれがようやくスタートするというタイミングでビッグモーターの不正疑惑が報じられたのです。同会の海津博会長は業界紙の取材に答え、「一連の法令違反行為が事実なら言語道断だ」と憤っていますが、私もまったく同感ですね。

――ビッグモーターについてはどんな印象をお持ちですか。

磯﨑孝『成長の原動力は会社を儲からないようにする』(プレジデント社)
磯﨑孝『成長の原動力は会社を儲からないようにする』(プレジデント社)

【磯﨑拓紀社長[以下、磯﨑(拓)]】ビッグモーターのことを詳しく知るようになったのは、同社が茨城に水戸店をオープンした2011年からです。急成長を遂げている勢いのある会社だという印象はありましたが、その頃からあまりいい評判は耳にしていなかったです。

現在も行われているかどうかわかりませんが、同社は新規出店に際して全国の店舗から店長クラスの社員まで動員し、そのエリアのシェアを一気に獲得するという戦略を取っていたようです。水戸店のオープン時に当社の社員が様子を見に行ったのですが、その際に接客対応したのも九州にある店舗の店長だったとのことです。

【磯﨑(拓)】その時、盛んに勧めてきたのが2年落ちのワゴンRで、新車と大して変わらない価格を提示されたそうです。それでも「オープンセールなのでお得ですよ」と畳みかけるようなトークで一気に契約までもっていこうとする営業手腕には、当社の社員も舌を巻いていました。