ビッグモーター社の利益至上主義の経営について、同業者はどのように見ていたのか。『成長の原動力は会社を儲からないようにする』(プレジデント社)を出した磯﨑自動車工業(本社:茨城県ひたちなか市)の磯﨑孝会長と磯﨑拓紀社長に聞いた――。(第3回)
中古車販売大手のビッグモーターの店舗=2023年7月28日、さいたま市緑区
写真=時事通信フォト
中古車販売大手のビッグモーターの店舗=2023年7月28日、さいたま市緑区

なぜビッグモーターはローンを強引に組ませたのか

――ビッグモーターでは、現金での購入を希望しても、強引にローンを組ませるケースも多いと報じられています。

【磯﨑拓紀社長[以下、磯﨑(拓)]】高額な金利を設定して、10年にわたる長期のローンを組ませるという話ですね。これは以前から業界内で話題になっていました。

ローンで物を買ったことのない若い人など、「月々の支払いはわずか○○円ですよ」と月払いの金額の安さだけを強調されて、金利を確認せずに契約してしまうこともあるようです。

――ビッグモーターが長期のローンを無理強いする理由とは?

【磯﨑(拓)】ローン会社からのキックバックがあるからです。金利が高く、返済期間も長ければ、キックバックはかなりの額になります。場合によっては、車の販売利益よりも多くなることもあるでしょう。

――金利の高い低いはあるにしても、自動車販売店にとってローンのキックバックは欠かせない収入源ということでしょうか。

磯﨑孝『成長の原動力は会社を儲からないようにする』(プレジデント社)
磯﨑孝『成長の原動力は会社を儲からないようにする』(プレジデント社)

【磯﨑(拓)】確かに高めの金利を設定して儲けようという販売店は、ビッグモーターに限らず以前から多くありました。

しかし、金利で稼がなければ事業が立ち行かないかというと、そんなことはありません。現に当社では会長の時代に「金利では儲けない」という経営方針を打ち出し、現在も変わらずこの方針を守っています。

【磯﨑孝会長[以下、磯﨑(孝)]】金利だけではありません。当社では、購入した車のメンテナンスにかかる工賃も従来の料金の半額にしたんです。

会社が儲からない方針をだした理由

――それはいつ頃のことでしょうか。

【磯﨑(孝)】創業して12年目、1984年でした。この年に、三本柱からなる新しい経営方針を定めました。それが「金利では儲けない」「工賃を半額にする」、そしてもう一つ「事故車は売らない」です。この3つを「会社を儲からないようにする」新方針としたのです。

できるだけ金利を下げればお客様が車を購入しやすくなりますし、修理代金を半額にすれば購入後のお客様の負担が減ります。さらに後々トラブルのもとになる事故車の疑いのある車は決して仕入れないという方針も、今後は徹底していこうということです。いずれも実行に移すには、当社の利益を削らなくてはなりません。