歴史上の人物の中から映画『オーシャンズ11』のような犯罪スペシャリスト集団を作るとすれば、誰が適任だろうか。歴史学者で英BBCの人気ポッドキャスターのグレッグ・ジェンナー氏が子供たちの質問に答える『ロンドン大学歴史学者の「歴史のなぜ」がわかる世界史』(かんき出版)より、一部を紹介しよう――。
映画『オーシャンズ11』の出演者
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映画『オーシャンズ11』の出演者

暴力的な人間や本当の犯罪者は除外

『“オーシャンズ11”みたいな強盗チームを結成するなら、歴史上のどの人物に声をかけますか? 匿名より』

オーシャンズ11』とは、2001年に公開されたアメリカ映画で、犯罪スペシャリスト集団がカジノの金庫室にある大金を狙う話だ。あれこれ考えるのはとても楽しく、共犯者リストの作成にずいぶん時間がかかってしまった。ほとんどの人間は基準を満たさなかった。

たとえば18世紀の泥棒ジャック・シェパードは、牢屋からなんと4回も脱獄したことで非常に有名になった。もちろん彼の持つ技術は、どこかに忍び込む場合にも役立つことは間違いない。しかしシェパードには、すぐに再逮捕されてしまうという困った習慣があった。魅力的な愚か者がわが家に警察官を連れてくるというのは願い下げだ。

暴力的な人間も、チームには加えたくない。温厚なペテン師集団がいいんだ! ということは、歴史上最も悪名高い銀行強盗の1人である、ヨシフ・スターリンも除外される。恐怖の専制君主となるずっと以前、若いスターリンは数々の強奪事件を指揮したが、その1つが1907年にチフリス(現在のジョージアのトビリシ)の広場で発生した銀行強盗事件だった。

革命を目指すボルシェヴィキのための資金調達策として、スターリンが計画をまとめあげたのだ。結果的にこれは流血事件となり、爆弾が使用されて多くの死者が出た。そんな手間をかけたにもかかわらず、奪った金は結局使えずじまいだった。紙幣の通し番号が当局に把握されていたからだ。

ということは、悲劇的なことだが、多くの死は無駄だったということだ。また恐るべき精神病質者であるスターリンは、僕の求めるような陽気で図々しい犯罪者の気質などは持ち合わせない。彼の役どころは間違いなく、映画の終わりに仲間全員を裏切るというものだ。お引き取り願おう!

というわけで、僕の空想上の歴史人物犯罪集団に迎え入れるのは誰か? 際限なくあれこれ考えた挙げ句に決めたのは次の面々だ。