自らを台湾人と偽ったフランス人著述家

●ペテン師:ジョージ・サルマナザール(1679頃~1763)

非公開エリアに侵入するには、口のうまい詐欺師がいる。そこでジョージ・サルマナザールも一味に加えようと思う。

1703年にロンドンに現れたサルマナザールは当時ヨーロッパでほとんど知られていなかったフォルモサ島(台湾)の出身だと主張した。ロンドンっ子を煙に巻くために彼は偽の言語、偽のカレンダー、偽の宗教、偽の文化習俗をでっち上げて、当時の最も学識豊かな紳士でさえも騙すことに成功した。

ベストセラーとなった彼の著書には多くの詳細な情報が詰め込まれていたが、すべてまったくのでたらめだった。たとえ誰かが疑惑を抱いても、サルマナザールは巧みな話術でうまく話をそらした。やがて化けの皮がはがれ、実はフランス人であることが判明したあとでさえ、彼の名声は失われなかった。危機をうまく回避できる人間がいるとすれば、それはジョージ・サルマナザールだ。

ナチスに「白ネズミ」と呼ばれた女エージェント

●コミュニケーション担当:ナンシー・ウェイク(1912~2011)

完璧な犯罪計画は、人を動かす力を持つマネージャーを必要とする。そして組織の敏腕統括者として、ナンシー・ウェイク以上の適任者は思いつかない。ニュージーランド生まれの彼女はフランスのレジスタンスとイギリスのSOE(特殊作戦執行部)の両方で重要な役割を果たし、フランスのナチス占領軍を混乱に陥れ、そして敵地に墜落した連合軍のパイロットを国外脱出させた。

ナンシー・ウェイク
ナンシー・ウェイク〈オーストラリア戦争記念館のオンライン カタログより〉(写真=PD-Australia/Wikimedia Commons

ウェイクはとにかくおもしろい人だった。ひょうきんで、激しく、頑固で、また状況がまずくなると優れた射撃能力を披露した。彼女の担当はロジスティクスと通信だったが、危険な戦闘を計画して自ら参加することもあり、必要とあれば敵兵を殺した。また敵兵の監視をくぐり抜けるために彼らといちゃついてみせることもあった。

ロンドンに重要なメッセージを届けるべく、自転車で500キロメートルをわずか72時間で走破したというのは有名な話だ。ナチスどもが彼女の正体に気づき、「ホワイト・マウス(白ネズミ)」と名づけて後を追いはじめたときでさえ、彼女は驚くほど巧妙に国外に脱出することに成功している。ナンシー・ウェイクはとにかくすごい女性で、彼女が僕のチームを動かしてくれることを確信している。