世界最古のジョークはどんなものなのか。歴史学者で英BBCの人気ポッドキャスターのグレッグ・ジェンナー氏が子供たちの質問に答える『ロンドン大学歴史学者の「歴史のなぜ」がわかる世界史』(かんき出版)より、一部を紹介しよう――。
昔のジョークのおもしろさは現代人には理解できない
『最初のジョーク集が書かれたのはいつ頃ですか? どんなおもしろいジョークがありましたか? ジョンより』
【質問】森にあるすべての葉っぱのなかで一番きれいなのはどれ?
【答え】ヒイラギ。誰もこの葉っぱで尻を拭こうとしないから。
これは僕のお気に入りの中世のジョークだ。たしかにとても優れているとは言えないが、これまでパブで披露するたびに、場は静かなくすくす笑いに包まれた。前提とオチがはっきりしている。わかりやすく短いのもいい。そして尻――尻ほど誰でもおかしみを感じるものがあるだろうか。
このジョークは、ヘンリー8世の治世初期の1511年にイギリスで出版されたシュールななぞなぞ集から取ったものだ。正直なところ、それなりに笑える内容ではあるが、滑稽さには限界がある。掲載されているユーモラスななぞなぞの大半は、シェイクスピア作品の難解な台詞に大笑いできる者も含めて、現代のほとんどの読者には理解不能だ。ヒイラギのジョークは間違いなくこの書物で最も優れているが、僕が次点とした次のジョークを読めば、質の低下は明らかだろう。
【質問】世界の人類の4分の1を殺したのは誰?
【答え】カイン。彼がアベルを殺したとき、世界に人間は4人しかいなかったから。
【質問】羊の群れにまぎれ込んだ1頭の牛を見分ける方法は?
【答え】目を使え!
白状すれば、この2番目のジョークには笑わせられた。あまりにもわかりきった答えだからだ。なぞなぞが知恵を絞った答えを期待させるような形式である場合、こういうのが意表をついていておもしろいのだ。意外性は笑いの重要な要素であり、ジョークの名手の多くは、私たちのもつ無意識の前提を平然と突き崩す名人なのだ。