「ふがいないきょうだい」とはどのように接すればいいのか。59歳の女性は、「長男はワル、次男はバカ、三男はクズ」という3人の兄に長年苦しめられてきた。このうち訃報を聞いた母親が「死んでよかった」と話すほどだった三男とはどんな人物をだったのか。ライターの吉田潮さんの『ふがいないきょうだいに困ってる』(光文社)より紹介する――。(後編/全2回)

※本稿では、プライバシー保護の観点から、すべての人物を仮名にしています。

たくさんの一万円札の上で慟哭するデッサン人形
写真=iStock.com/BBuilder
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あまりに馬鹿でちょっと気の毒な次兄

さて、お次は次兄。秀さんの話をしているとき、美華さんの口から出た「馬鹿だから」という言葉は30回を超えた。

「秀は単純、成績がオール1の中学生だと思ってください。だけど会社で役職に就いちゃって、お金だけもらって博打三昧。あまりに馬鹿でちょっと気の毒に思うくらい」

物静かな秀さんは「学校に行きたくない、父の会社で働きたい」と言い、中学を卒業後すぐに父の会社に入った。真面目で酒も飲まないがヘビースモーカー。現場仕事も経験しているきょうだい唯一の職人肌と言ってもいい。

働いてはいたが、書類仕事ができず、管理職には向かない。パチンコと競馬のために消費者金融から借りる。給料のほとんどを返済に費やす、純粋なギャンブル依存症だという。

浮いた話はなく、現在も独身。

「父は『使えないけどしょうがない』とは言ってました。圧をかけてくる長兄、調子のいい三兄に挟まれて、いつも貧乏くじを引かされてるんですよね。可哀想だなと思ったことも何度かありますが、馬鹿だからしょうがない。びびりのくせにプライドだけは高いんですよ。自分が馬鹿だとわかってもいるから、銀行員とか大学を出たホワイトカラーの人としゃべるのが嫌なんです。馬鹿にされるのが嫌なんです。

だから、3人の中で一番私にマウントしてくる。要するに、自分は兄からも弟からも馬鹿にされてるから、妹にしか言えないんでしょう。でも私の言うことなんか絶対に聞かない。何かトラブルが起こると、すべて私のせいにするか、私に尻拭いさせる。そういうやつです」

秀さんは年齢のわりに社会常識がない。現場の職人として勤め上げていればよかったものの、謙さんにそそのかされたこともあって、うっかり関西支社の取締役に就任したところから歯車が狂った。