「妹が金を勝手に使い込んだ」と吹聴
長兄に比べれば、扱いやすそうな気もするのだが、秀さんの常識のなさとプライドの高さが災いした事件が起きたという。
取締役どころか管理職に向かない母を社長に据え(実質は美華さんが八面六臂の暗躍)、長兄の借金も返し、会社を立て直す段階で、どうしても社員の給料を削減せざるを得ない状況になった。
「なんと秀は『妹が金を勝手に使い込んだ』と社員に話したらしいんです。支社の専務から電話があって、『なんか全部美華さんのせいにされていますよ』って。冗談じゃない。自宅を担保にされないために、会社を立て直す事業計画も出したし、私は自分のために会社のお金を使ったりしません」
秀さんは事業計画書も読めないが、給料は120万もらっていたという。
「秀と充の給料を減らせば、社員の給料をカットしなくても済むのに、ふたりとも借金まみれだから頑として受け入れないわけ。しかも会社に来ないという。それで給料1割カットなんて言われたら社員は不満をためこみますよね」
兄の生殺与奪の権を妹が握る
秀さんはなぜ会社に来ていなかったのか。
「秀は馬鹿のくせに、権力だけは振りかざすんですよ。ベテランのスタッフにブチ切れて勝手にクビにしたもんだから逆に訴えられてしまって。労働組合も出てきて大ごとになったんです。秀が金目当ての弁護士を無料法律相談かなんかで見つけてきて、煽られて裁判やっちゃって。結局負けました。裁判費用や示談金やらで2000万ですよ! この不手際が恥ずかしいのか出社しなくなったみたいで」
結局、秀さんはぶんむくれて会社をやめると言い出した。定年まであと1年。秀さんが抱えていた借金1000万近くは美華さんと母が払い、退職金も小分けに出すことですんなり身を引いた。
「家の賃貸契約はおろか、携帯電話の機種変更、年金や保険の手続きもひとりでできないから、とにかく生活できるようにしてやりました。家賃や保険、税金などはすべて私が支払い、生活費を補塡してあげて、クレジットカードも渡してあります。だってこれ以上サラ金から借りられても困るから」
秀さんの生殺与奪の権は、今、完全に美華さんが握っている。