このように、日本中を震撼(しんかん)させた凄惨(せいさん)な事件を背景に、国民も少年法の改正を後押ししてきたわけだ。だが、厳罰化の根拠の一つになっている「少年事件の増加・凶悪化」という主張については注意を要する。『犯罪白書(平成23年版)』によると、少年による刑法犯の検挙人員は83年の31万7438人がピークで、10年は12万7188人と、大幅に減っているからだ。また、たとえば少年鑑別所に収容された非行名を記した統計を見ても、窃盗、傷害など、比較的軽微なものが多い(図3参照)。
「そもそも統計自体を疑ってかかる必要があります。検挙される少年犯罪は万引き(窃盗)や自転車の乗り逃げ(占有離脱物横領)など軽微な犯罪が多いのですが、これらの検挙数は警察の力の入れ方しだいで大きく左右され、うのみにできないからです。凶悪化についても、その背景を考えることのほうが大切。近年は暴走族が減るなど少年犯罪の脱集団化が進んでいます。子供たちは上下関係を嫌いますし、集団の中でのコミュニケーションの取り方を学ぶことができません。そのため、被害者と対面する必要がある恐喝をするより、ひったくって奪ったほうが早いと短絡的になるのです。その結果、強盗は増えていますが、一方で殺人はほとんど横ばい。こうした状況を凶悪化と呼んでいいのか疑問です」(後藤教授)