「00年の改正で14~15歳も逆送が可能になり、実刑の場合は15歳まで少年院で受刑させて、16歳から少年刑務所に送るという制度ができました。ところがこの制度、いままで一度も活用されたことがありません。それは14歳で犯罪行為を行っても、結局、刑事裁判が終わるころに16歳を超えているから。つまり制度はすでに行き着くところまで行っていて、実態とかけ離れているのが現状。ですから、これ以上、厳罰化しても無意味。もし議論があるとしたら、成人年齢が18歳に引き下げられたとき、どうするかでしょう」
冒頭に記した亀岡の事件は、新聞報道によると5月14日、京都地検が運転していた少年を自動車運転過失致死傷(最高刑・懲役7年)と道路交通法違反(無免許運転)の非行事実で京都家裁に送致。地検は当初、危険運転致死傷(最高刑・懲役20年)の適用を検討したものの、事故の原因が「過失である居眠り運転」と判断、故意犯を対象とする危険運転致死傷の適用は見送られた格好となった。これを受けて家裁は少年審判の開始を決定、6月上旬には審判が下されるという(※注2)。少年院送致などの保護処分となるか、逆送して起訴、刑事裁判となるか、その決定は再び世論を揺るがすことになるだろう。
もし起訴されると、間違いなく裁判員裁判となる。裁判は公開され、被害者遺族も裁判に参加することができる。被害者の無念を考えると、より厳罰化を求める気持ちは理解できよう。だが、それで少年犯罪そのものがなくなるかどうか──。後藤教授は次のように指摘する。
「加害者を生んだ社会そのものが変わらないかぎり、問題の本質は何ら解決できないのです。人が殺されたら、取り返しがつきません。それは加害者を死刑にしても変わりません。加害者を含めて私たちが、どのような責任の取り方があるのか、悩み続けること。それが社会の一員である私たちに求められていることなのではないでしょうか」
(※注2):6月17日、少年は自動車運転過失致死傷などの罪で京都地裁に起訴された。被害者家族らは、より刑罰の重い危険運転致死傷罪での起訴を求め署名運動もしたが、同罪の適用は見送られた。