朝、元気に家を出て学校へと向かったわが子が、突然の事故により帰らぬ人となる……。京都・亀岡で起こった暴走自動車による死傷事件は、運転者が無免許少年だったことで波紋を呼んだ。なぜなら、加害者が未成年だった場合、「少年法」が適用され、逮捕後の扱いも科される処分も、成人の場合とはまったく異なるからだ。その理由は?

なぜ「少年法」は罪を犯した加害者をそこまで保護するのか

今春、世間を驚かせる少年事件が相次いだ。4月23日、京都府亀岡市で登校中の児童の列に軽乗用車が突っ込み、児童ら10人が死傷。軽乗用車を運転していたのは、無免許の18歳少年だった。亀岡の事故が起きた前日には東京都八王子市で路線バスの運転手が刺される事件が起き、14歳の少年が逮捕された。

少年事件が起きるたびに注目を集めるのが「少年法」の存在だ。少年法では、犯罪行為を行った14歳以上20歳未満の少年を「犯罪少年」、14歳未満で刑罰法令に触れる行為を行った少年を「触法少年」として、成人とは違うプロセスで処分を決定する。成人と同じく刑事処分を受けることもあるが、その場合も量刑は軽め。凶悪な少年事件が起きるたびに「少年を特別扱いするな」「甘い処分が犯罪を誘発させる」と批判が起こり、少年法が議論の俎上(そじょう)にのせられる。

どうして少年は成人と違うプロセスで裁かれるのか。少年法に詳しい千葉大学大学院専門法務研究科の後藤弘子教授は、少年法の趣旨をこう解説する。

「もともとわが国の刑事システムは、犯罪が起きた責任を加害者だけに負わせるのではなく、社会全体で担うべきだという考えに基づいて設計されています。とくに少年の場合は未成熟なので、成人に比べて社会が負うべき責任は大きい。成人と同じように罰して責任を取らせるより、2度と非行に走らないよう国が親に代わって育て直す。少年法の根底には、そうした考え方があります」