実際、少年法はその目的を次のように規定する。
「この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする」(第1条)
少年が事件の加害者であるにもかかわらず、まるで被害者のように扱われることに違和感を覚える人もいるかもしれない。しかし、次のような実態にも目を向ける必要があると、後藤教授は指摘する。
「2000年に最高裁判所が少年の起こした重大事件について調査したところ、すべてのケースで家庭に暴力があったことがわかりました。少年本人が暴力を受けることはもちろん、父親の母親に対する暴力を目撃することも虐待の1つです。いずれにしてもこうした環境で育った子供たちは暴力に親和的になり、問題の解決を暴力に頼ってしまう。また女の子の場合は、家庭で性的虐待を受け、それを避けるために家出して犯罪に手を出したというケースが少なくない。このように非行少年は何らかの形で家庭や社会から被害を受けていて、その悪影響で非行という行動に出る。いわば加害者の少年も、被害者の一人なのです」
こうした実態を考えれば、少年法が少年の保護を第一に考えていることは理解されよう。だが、その一方、人命など被害者が事件によって奪われたものは元に戻らないケースも多く、ふに落ちないことだらけとなる。少年法を適用する事件の数が、成人を含めた「一般刑法犯の検挙人員」のうち4分の1強を占めていることも侮れない(図1参照)。