広さ3畳で暮らす狭小住宅の人気の秘密
1973年9月にリリースされたフォークソング「神田川」は、作詞・喜多條忠、作曲・南こうせつの名曲である。作詞家の喜多條忠が描いたのは彼が早稲田大学在学中に恋人とすごした神田川近くのアパートの情景だ。
「窓の下には神田川、三畳一間の小さな下宿、貴方は私の指先見つめ、悲しいかいってきいたのよ」
地方から上京してきた貧乏学生にとって、東京で暮らすことは生活費も高く、風呂がなく、トイレや炊事場は共用のアパートを借りるのが精いっぱいだった。
だが、生活水準も向上し、豊かになった現代日本で、今再び居住スペース3畳ほどの狭小住宅が人気を集めている。相変わらず東京には若者が集まり、地価は高く、生活していくのに苦労することには変わりはないが、人気の秘密は貧乏ではなく、「あるものだけで暮らす」「無駄なものは持たずに暮らす」という新しい生活価値観にある。
都心の新築物件でも、家賃は相場の半分ほど
狭小住宅は都内好立地にあって、1部屋の面積はおおむね3坪(10m2)程度だ。最近のワンルームマンションは1部屋の面積が8坪(26m2)から9坪(30m2)くらいであるからおよそ3分の1の狭さだ。
間取りはトイレと洗面台、シャワールームといった水回り機能があるくらいで、居住スペースは3畳ほどだ。物件によってはロフトを確保し、はしごで上って寝起きするものもある。
家賃は立地や物件内容によって異なるが、戸当たり月額5万円から8万円程度。都心にある通常のワンルームだと10万円前後になることを考えると割安といえる。しかもこうした物件はおんぼろアパートではなく、最初からこうした仕様で企画された新築物件を中心に供給されているのだ。
では狭小住宅に住むメリットは何だろうか。もちろんグロスの家賃が安いのは当然だが、「ただ安い」から選択するわけではない。選択理由には、生活費という無駄な出費を極力抑え、自身にとっておカネを有効に使いたいとの意思があるのだ。