23区の新築マンションは平均で1億円超え
不動産経済研究所が調査、発表する「新築分譲マンション市場動向」によれば、2023年上半期(1月~6月)首都圏(1都3県)における新築マンション供給戸数は1万502戸。平均価格は8873万円と、前年同期比で36.3%もの大幅な値上がりとなった。またこれを東京23区に限定すると平均価格はなんと1億2962万円、60.2%上昇という、信じられないような高値となっている。
これを坪当たりの単価に直すと1坪(3.3m2)636万円だ。庶民感覚からいえば、都区内の新築マンションは一般的なファミリー向けである66m2(20坪)=1億2720万円はおろか、10坪(33.3m2)=6360万円すら手が届かないというのが今のマーケットの現実だ。
もちろんこうしたデータには一定のバイアスがかかることがある。同時期に供給された新築物件でたまたま都心一等地にまとまった販売があったことが背景との指摘もある。
しかし、たとえば東京都北区のJR埼京線「十条」駅前に誕生する39階建てタワーマンションは、間取り2LDKから4LDK、住戸面積58m2から92m2で販売価格は8050万円から1億5890万円だ。坪あたり単価は約500万円。つまり20坪(66m2)で1億円である。
私は長らく不動産業界に身を置いてきたが、この立地での相場観からして正直びっくりするような販売価格だ。
「億ション」はかつて憧れの物件だったが…
たまたまこの物件の発売前に、事業関係者と話す機会があったが、彼らですら自ら「驚きの価格」と表現していた。ところが実際に売り出してみると反応は上々だという。
たしかに駅徒歩1分の「十条」駅から埼京線直通で池袋へ7分、新宿13分、渋谷に18分という交通利便性や充実した商店街など評価できるポイントはある。でもそれにしても坪500万円は驚き以外の何ものでもない。
一昔前であれば、販売価格が1億円を超えるマンションは「億ション」と呼ばれ、一部のセレブリティにしか買えない憧れの物件だった。ところが現在では東京都心一等地ばかりでなく、億ションの立地は加速度的に広がっている。