全タワマンの価値が上昇し続けるわけがない

ところで首都圏ではすでにどのくらいの数のタワマンがあるのだろうか。不動産経済研究所の調査データによれば、2004年以降22年までに首都圏で供給されたタワマンは679棟21万1879戸に及ぶ。

同期間内で供給されたマンションは89万2119戸であるから、戸数ベースでいえばなんとおよそ4分の1、23.8%がタワマンの形態で供給されたものであることがわかる。

私たちはなんとなくタワマンは建物の高さだけでなく、価格も高いもの、つまり高級マンションの代名詞のように扱いがちなのだが、首都圏で供給されるマンションのかなり多くがタワマンという事実は知っておくべきだ。つまりすべてのタワマンが今後も資産価値を上昇させ続けるというシナリオは考え方としてはややお花畑だということだ。

超高額マンションの定義が億ションから2億ションあるいは3億ションになっていくということ、そしてそれらの物件の多くが、麻布や広尾といったブランド立地であることを考えれば、不動産として本当に価値を保ち続けるマンションというのはおのずと限定されていくことになる。ただこのレベルのマンションは一般人のお財布では、どんなに頑張ったところで手は届かない。

居住リスクの多い湾岸タワマンは金融商品

ではその他のタワマンの資産価値についてはどのように判断すればよいのだろうか。

まず湾岸エリアに立地するマンションは、住居というよりも金融商品だと考えたほうが良い。もうすでに語りつくされているが、湾岸エリアは海からの風の影響による建物劣化、地震などの災害発生時における土地の液状化や津波、電気、上下水道設備等の被害による生活環境の破壊など、長く居住する環境を整えているとは言いがたい。

いっぽうで所有者が居住だけを目的にした人ばかりではなく、富裕層の節税対策、外国人投資家による投資、不動産の値上がりを見込む業者による転売目的の買い占めなど、さまざまな思惑が交錯するのがこのエリアの特徴だ。要は資産劣化が激しくなる前に、売り抜けることでキャピタルゲイン(譲渡益)を狙うことだ。

長く所有すればするほど、大規模修繕に伴う費用負担やら、管理組合内での意見統一の困難さなどからストレスが溜まることになるだろう。株式や債券、商品相場でもやっている感覚で、国内外の金融情勢を勉強しながら適切なタイミングで「売り抜ける」ことが不可欠だ。