3月7日、イギリス公共放送BBCが、TV局として世界で初めてジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川氏(2019年死去、享年87)の性加害を詳報した。この問題は1999年に『週刊文春』が報じ、ジャニー氏は報道を否定して提訴したが、2004年2月の高裁判決で性加害の事実が認められている。だが、依然として国内での報道は限定的だ。ロンドン在住ジャーナリストの木村正人さんは「日本のメディアが横並びのムラ社会である証左だ」という――。

家父長制が覆い隠す「芸能界最大のタブー」

「これを我慢しないと売れないから」「僕1人お風呂入れられて全身洗われて、お人形さんみたいに。別の日には口でされた」。2019年、87歳で亡くなった“ジャニーズ王国”創設者ジャニー喜多川(本名・喜多川ひろむ)の児童性的虐待を取り上げたTVドキュメンタリー「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」が7日、英BBC放送で放映された。

ドキュメンタリーで「否定とメディアの沈黙が日本で最も強力なポップミュージックの大物が何十年にもわたって10代の少年を搾取することを許した」問題を追及したリポーター、モビーン・アザール氏に対し、英紙ガーディアンのTV批評担当ルーシー・マンガン記者は「アザール氏の子供のような怒りや不信感は作品のトーンを損なっている」と手厳しい。

巨大なクモの巣の中心に君臨し、文字通りグルーミングで10代の少年たちをがんじがらめにして性的搾取を続ける。芸能界最大のタブーを覆う「日本における恥の文化」をもっと掘り下げるべきであり「家父長制は社会を組織する上で良いシステムではない。主な理由はそこにいる男たちだ」とマンガン氏は指摘する。有名人、コーチ、神父……捕食者はどこにでもいる。

豪公共放送のオーストラリア放送協会(ABC)は「英司会者ジミー・サビル(2011年死去)も、米映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインもいったんスキャンダルが暴露されるとメディアの水門が開き、彼らの評判は一夜にして崩壊した。喜多川が亡くなった時、疑惑はほとんど無視された。その代わり、この音楽界の大物には称賛が浴びせられた」と伝えた。