安倍首相も弔辞で「ジャニーさん」と呼んだ
19年9月に東京ドームで行われたお別れの会では安倍晋三首相(当時、故人)の弔辞が代読された。「突然の訃報に世代を超えて日本中が大きなショックを受けました。それはジャニーさんが昭和、平成、そして令和とそれぞれの時代を代表するスターを生み出してこられたことの証左だと思います」。「ジャニーさん」という言葉に親しみが込められていた。
英国でもBBCの国民的人気司会者だったジミー・サビルの児童性的虐待が彼の死後に白日の下にさらされた。#MeToo運動に火を付けた米ハリウッドの大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性暴力、米R&Bシンガーソングライター、R・ケリーの性的人身売買……。芸能界の性的搾取は日本に限った話ではない。
しかし日本の特異性は「Jポップ界のゴッドファーザー」と呼ばれた喜多川の死後も児童性的虐待が日本社会では闇に葬り去られたままだという事実だ。ジャニーズ事務所は今も芸能界に君臨し続けている。過去30年以上にわたる日本の約150紙誌の新聞・雑誌記事を横断検索できるG-Searchに「ジャニー喜多川」と入力すると6787件がヒットした。
紅白歌合戦を開催できなくなるNHKはだんまり
喜多川が死去した時、NHKは「僕たちのショーはハッピーエンドで終わります。世界もハッピーエンドであってほしい」という本人の言葉を伝えている。朝日新聞は1756字の評伝で「最大の功績は男性アイドルを育成するシステムを構築したことだ」というライター、松谷創一郎氏の声を紹介し、所属タレントへのセクハラを認めた東京高裁判決に短く触れている。
毎日新聞も評伝で「日本の大衆文化に大きな影響を与え続けた巨人」「『たのきんトリオ』も『SMAP』も『嵐』もタレントたちはすべてジャニーさん個人のエンターテインメントにかける『夢と理想』そのものであった」「ジャニーさんはウォルト・ディズニーがそうであったようにエンターテインメントにおける『満足保証の名前』だった」と絶賛している。
「ジャニー喜多川 AND セクハラ」でのヒット件数は24件。「ジャニー喜多川 AND 性的虐待」ではたった9件。毎年大みそかに紅白歌合戦を放送するNHKの記事はゼロ。昨年、白組のうちジャニーズ事務所所属はSixTONES、なにわ男子、Snow Man、King & Prince、関ジャニ∞、KinKi Kids。ジャニーズ事務所にソッポを向かれたらNHKは紅白歌合戦を開けなくなる。