めだかに魅了され、めだかに救われた男
コロナ禍で、青木さんの「気合い」はスパークした。2021年10月、エイベックスの社員と知り合ったことが縁になり、シングルCD『めだか達への伝言』を発売。これは青木さんが大きな影響を受けた落合信彦の著書『狼たちへの伝言』のオマージュで、その歌詞は精神的な悩みを持つ若者へのメッセージとなっている。
さらに同月、スポーツウェアメーカー、デサントとのコラボで、めだかのプリントが入ったアパレルシリーズをリリースした。2022年10月には、クラウドファンディングで集めた300万円を超える資金を投じてめだか盆栽を宇宙に打ち上げている。それぞれのエピソードは割愛するが、青木さんの想いは一貫している。
「コロナ禍で経験したのは、世の中が一瞬で変わってしまうということですよね。明日のことがわからないんだから、障害を抱える人だって毎日を一生懸命楽しく生きよう、そんな福祉があってもいいじゃないかというメッセージです。僕を信じてついてきてくれるスタッフや利用者から、青木さんってほんとに面白い、最高って思わせることが、社長としての仕事だと思ってるんですよ」
こういったド派手な活動によって、青木さんの名前はそれまで以上に広く知られるようになった。その結果、某大手スーパーから声がかかり、なんと全国初、ショッピングモール内でB型福祉事業所を開く準備が進んでいる。さらにこの4月には八王子市内にもう1軒、B型福祉事業所が開設予定だという。もちろん、どちらもめだかを中心にした「カッコイイ福祉」だ。
2016年の起業から7年経った今年、青木さんは5つの事業所とオーパの直営店を運営することになる。顔面けいれんとうつ病で悩んでいた時期を知る人には、想像もつかない姿だろう。
めだかに魅了され、めだかに救われた男は、まだまだ足を止める気はない。
「もっともっと事業が発展的すれば、メダカ盆栽の専門店を増やしたいし、飲食店も好きだからやってみたい。そこで働くのは、やっぱり僕のもとで頑張ってくれた子たちだよね。僕は20代の頃に死にかけて、福祉に元気をもらったから、ガソリンを身体いっぱいに積み込んで、それを福祉に使い切って終わりっていう人生にしたいな」