「なんで?」魂がさく裂
その施設では、知的障害や精神障害を持つ人たちにめだかの飼育を指導した。そこで、新たな気づきを得た。特性のひとつとして「こだわり」が強かったり、「繰り返し」を苦にしない人、「手抜き」をしない人が少なくないため、青木さんを上回るレベルで日々のルーティンワークに真剣に取り組むなど、めだかの飼育に向いているとわかったのだ。また、めだかという生き物と触れ合うことで、情緒が安定したり、情操教育につながることも実感した。
「アニマルセラピーってありますよね。精神を病んでいる人や知的障害がある人たちにとって生き物との触れ合いはすごくいいとされているんですけど、めだかって気軽に飼えるし、大嫌いっていう人がいないんですよ。日々の支援のなかで、彼らならいいめだかを作ることができると確信しました。いいめだかが欲しい人は、誰が作ったかというのは問いません。いいめだかには、いい値がつきます」
青木さんは施設で働きながら、2013年に2冊目の著書を発売、さらに2015年、東京・江戸川区で開催される観賞魚の祭典「第33回 日本観賞魚フェア」の改良メダカコンテスト部門で優勝するなど、めだか業界でも存在感を高めていた。
青木さんの収まることを知らない「なんで?」魂がさく裂したのは、バクテリアを利用した水質浄化システムだ。つわりの妻が水槽の匂いを「臭い」と言って吐いていた姿、そして水槽の水替えが難しい障害者と間近に接することで、水が汚れず、臭いもしない水質浄化システムの開発を思い立った青木さんは、科学の知識ゼロから実験スタート。
詳細は省くが、3年かけて水替え不要、エアレーション(酸素を送る装置)も不要の「青木式自然浄化水槽」を作り上げた。青木さんはこれを2015年に特許申請し、2016年に認められている(特許番号「JP5909757B1」)。なんで特許をとるような発明ができたんですか? と尋ねると、青木さんは笑った。
「メダカを通じて出会った多くのアクアリストから得た知識は、すべて実験をして自分のものにしてきました。そのうえで浮かんでくるなんで、なんで、なんでっていう疑問をひとつずつ潰していったんです。その頃は職場に自分の部屋があったから、そこで研究していて気づいたら朝だったってこともしょっちゅうでした」