企業人事部…ウッチャン型上司「実際のところは…」

では、新入社員が理想とする「丁寧でやさしく指導してくれる上司」はリアルなビジネスの現場にいるのか。建設会社の人事課長は、「実際には少ない」と語る。

「丁寧で優しく指導してくれる上司の最大の特徴は、何より聞き上手であること。じっくり話を聞き、与えた仕事が本人のキャリアのために必要であることをわかりやすく丁寧に説明し、目指すべきゴールを設定してあげる。たとえば『今はムダな仕事だと思っているかもしれないが、いずれきっと役に立つから』、あるいは『今は大変かもしれないが、だからこそ君にやらせるんだ』と、本人の意欲を奮い立たせるのが非常にうまい人だ。ただし、言葉で言えば簡単だが、それを実行できる管理職は少ない」

しかもこうした人を育てるスキルは研修で身に付くものではないとも言う。人事課長は「コミュニケーションがうまいだけではなく、人に対する思いやりとか、何とか助けてやりたいという、その人の人間性からにじみ出てくる要素が大きい」と語る。

実際にウッチャンができるかどうかは別にして、ウッチャンタイプの上司は少ないという。

では、ウッチャンタイプの上司は新入社員には優しくても、会社で出世できるタイプなのか。前出の広告関連業の人事課長は「現実には難しい」と語る。

「出世するには人間関係は大事だが、部下よりも、むしろ上の上司と、横の取引先との信頼関係を築いている人が出世している。若い時から上との人間関係づくりを一生懸命にやり、上から自分にとって不可欠な部下という信頼関係ができると、上に引き上げられるケースが多い。単に部下に優しいだけで出世することはありえない」

もちろん、部下にやさしいだけではなく、仕事の結果も残さないと出世することはない。

光あふれるオフィスで、ブリーフケースを持って出ていこうとしているビジネスパーソン
写真=iStock.com/Pixfly
※写真はイメージです

ただし、最近は一部企業で部下のマネジメントがうまい人も評価されるようになってきている。前出の建設会社の人事課長は語る。

「最近は部下を育てるのがうまく、部下の背中を押して前向きに仕事をさせるような人が管理職として能力が高いという評価に変わってきている。もちろん、その結果、部下一人ひとりが成果を出し、課全体の業績が上がることは必須だ」

新入社員に優しく指導できるだけではなく、仕事への情熱を持ち、結果を出せる実力のある上司でなければ昇進することはない。

今年の新入社員を受け入れる企業は、ウッチャン型の丁寧で優しさが売りの上司だけではなく、場合によっては叱ってくれる仕事に対する熱量の高い上司もカッコイイのだという魅力をいかに伝えていけるのか、問われることになる。

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