ユニクロを展開するファーストリテイリングが、最大約40%の大幅賃上げを発表した。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「これからの日本での経営課題は『人手不足』になる。企業の賃上げが相次げば、薄給ブラック企業というビジネスモデルは成り立たなくなる」という――。

ユニクロの「大幅賃上げ」の波及効果

岸田文雄首相が推進する賃上げ政策は、当初は大企業の正社員だけにとどまる話かと思われていましたが、ここ1カ月で急激に風向きが変わってきました。

年末年始の段階では、経済団体のトップが大企業に対して5%の賃上げを提言し、個々の大企業は春闘での3~5%幅での賃上げを模索する程度の状況でした。そこから大きく風向きが変わったのが1月11日のことです。この日、ユニクロを運営するファーストリテイリングが国内の従業員給与について平均15%、最大で40%賃上げすると発表したのです。

ユニクロの店舗・東京
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このニュースでユニクロが評判を大きく上げるのを目の当たりにした大企業はにわかにざわつき始めました。その後の反応を見る限り、今年の春闘では大企業はおおむね5%に近い水準を表明せざるをえない空気ができたのと同時に、中堅中小企業にもこの動きが広まりそうです。

そしてこのニュースで重要だったもう一つのことは、非正規従業員の賃上げは昨年秋の段階で既に反映済みだとした点です。その後の取材で、ユニクロの非正規従業員の賃上げ幅は約2割だったと報道されています。

オリエンタルランドやイオンも追従

これに影響されたのでしょう。ユニクロに続く形で非正規労働者比率の多い大企業がつぎつぎと非正規労働者の大幅賃上げを発表します。ダンサーやキャストといった非正規労働者を多く抱えるオリエンタルランドは、パート・アルバイト含め約2万人の従業員の賃金を平均で7%上げると発表しました。イオンも全国40万人のパート・アルバイト従業員の賃金をやはり7%引き上げると表明しています。

一連の流れとして、賃上げ問題は働き手にとって良い方向へと向かっているように見えます。水を差すつもりは毛頭ないのですが、これらの報道についての一番のつっこみどころは、オリエンタルランドに関する報道で「大規模な賃上げは6年ぶり」だとされている点です。