Z世代は「丁寧で優しい上司」を求めている
日本能率協会が実施した「2022年度新入社員意識調査」によると、「理想的だと思う上司・先輩」で最も多かったのは「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」で、71.7%となっている。
興味深いのは、2012年は52.4%にすぎなかったが、2020年は59.3%に上昇し、22年はほとんどの新入社員が丁寧な指導をする“優しい”上司を求めていることだ。おそらくウッチャンを選んだ今年の新入社員も同じ傾向だろう。
Z世代が丁寧で優しい上司を求めるのがよくわかると語るのは広告関連業の人事課長だ。
「最近の新入社員は基本的には良い子が多い。性格的にはガツガツしていないし、さりとておとなしいわけでもなく、あえて言えば言動にソツがない。教科書通りにやることはすごく得意だし、ある意味で優秀だと思うが、ただし共通するのは、失敗を恐れる優等生という感じだ。先輩や上司がちゃんと教えてくれないことに不満を抱え、教えてもらっていないことをやることを極端に嫌がる傾向が。何かミスをして叱っても『教えてもらっていませんから』と平気で言う。それでいて相手の懐に飛び込んで、教えを請うのが苦手だ。へりくだって教えてくださいと言うのが嫌だし、教えてくれないのも嫌なんです」
前出の日本能率協会の調査では「仕事をしていく上での抵抗のある仕事」は何かについて聞いている。最も多かったのは「上司や先輩からの指示が曖昧でも、質問をしないで、とりあえず作業を進める」ことに抵抗があると回答した人が40.9%、どちらかといえば抵抗があると答えた人を含めると、82.7%に上る。
Z世代の気質に近いといえる。ソツがなく教えられた仕事は忠実にこなすのだが、教え方や指示が曖昧なことに強い抵抗感を持っている。
もう一つ興味深いのは、同調査で「場合によっては叱ってくれる上司・先輩」や「仕事の結果に対する情熱を持っている上司・先輩」の人気が年々低下していることだ。
叱ってくれる上司を理想とする人は、2012年に33.7%いたが、22年は17.6%に激減している。仕事の結果に情熱を持っている上司も12年の34.1%から22年の9.5%へと急降下している。
過去の有名人の男性の人気上司を見ると、2013年のベスト2は池上彰、阿部寛、14年はイチロー、池上彰、15~16年は松岡修造が登場し、池上彰と1~2位に入っている。テレビ番組でのわかりやすいニュース解説で知られる池上彰さんは、知性・実力派と思われる。
先の調査と一概に比較はできないが、俳優の阿部寛さんは、役柄のイメージもあり「場合によっては叱ってくれる上司」に映っているかもしれない。
また、アスリートのイチローさんや松岡修造さんは「仕事の結果に情熱を持っている上司」であるのは間違いなく、「場合によっては叱ってくれる上司」でもあるだろう。
そうすると、Z世代の新入社員はイチローさんや松岡修造さんタイプの上司は、ちょっと苦手という感覚を持っているということになる。