※本稿は、沢木文『沼にはまる人々』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。
あだ名は「ドイツ豚」
現在、175センチ、95キロ程度のぽっちゃり体型の圭太さん(32歳・仮名)は、3年前に筋トレにはまった。その当時は、今より20キロほど、体重が少なかったという。
「小・中学校といじめに遭い、太っていることへのコンプレックスがありました。当然、モテない。このままではダメだと思い、29歳のときに筋トレを始めました」
その筋トレには沼のようにのめり込んだという。
圭太さんは都心から1時間程度の郊外のベッドタウンで、両親ともに高学歴な家の長男として生まれた。幼い頃に父親のドイツ赴任に帯同。現地の日本人学校に通った。
「思えばこの頃が一番楽しかった。ドイツはサッカー教育が熱心で、一流の選手が教えに来てくれた。ゴールキーパーのカーン選手を間近で見たときは感動しました」
小学校高学年で、日本に帰国。地元の小学校に通い始めたところ、壮絶ないじめに遭った。
「一応、日本人学校に行っていたから、日本人のトーン&マナーはわかるつもりだったけれど、やはり異質になってしまうんですよね。きっかけは学校に水筒を持ってきたこと。ドイツは水道水を飲まないので、生理的に水道水が飲めないんです。
その結果、学校に水筒を学校に持って行ったら、『なにそれ』と注目の的になりました。後はシャープペンシルを使ったことで、先生に目をつけられた。公立小学校は、鉛筆の柄まで決められている。ことごとく違う僕は反抗的ということになってしまい、めっちゃいじめられました」
それは、圭太さんがぽっちゃり体型だったことも大きい。
「白豚、ドイツ豚などと言われましたね。今でもいじめの中心人物の顔と名前は憶えていますよ。いじめの内容は壮絶すぎて語りたくありません。先生は見て見ぬふりをしていました」