人はなぜ、筋トレに魅了されるのか。32歳のラブホテル清掃の男性は、3年前に貯金のすべてを筋トレにつぎ込んだ。2カ月もしないうちに、体重は20キロほど落ち、得るものと失ったものがあるという。ライターで編集者の沢木文さんが書いた『沼にはまる人々』(ポプラ新書)より紹介しよう――。(第6回)

※本稿は、沢木文『沼にはまる人々』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

6パックヘルスケアライフスタイル
写真=iStock.com/antondotsenko
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あだ名は「ドイツ豚」

現在、175センチ、95キロ程度のぽっちゃり体型の圭太さん(32歳・仮名)は、3年前に筋トレにはまった。その当時は、今より20キロほど、体重が少なかったという。

「小・中学校といじめに遭い、太っていることへのコンプレックスがありました。当然、モテない。このままではダメだと思い、29歳のときに筋トレを始めました」

その筋トレには沼のようにのめり込んだという。

圭太さんは都心から1時間程度の郊外のベッドタウンで、両親ともに高学歴な家の長男として生まれた。幼い頃に父親のドイツ赴任に帯同。現地の日本人学校に通った。

「思えばこの頃が一番楽しかった。ドイツはサッカー教育が熱心で、一流の選手が教えに来てくれた。ゴールキーパーのカーン選手を間近で見たときは感動しました」

小学校高学年で、日本に帰国。地元の小学校に通い始めたところ、壮絶ないじめに遭った。

「一応、日本人学校に行っていたから、日本人のトーン&マナーはわかるつもりだったけれど、やはり異質になってしまうんですよね。きっかけは学校に水筒を持ってきたこと。ドイツは水道水を飲まないので、生理的に水道水が飲めないんです。

その結果、学校に水筒を学校に持って行ったら、『なにそれ』と注目の的になりました。後はシャープペンシルを使ったことで、先生に目をつけられた。公立小学校は、鉛筆の柄まで決められている。ことごとく違う僕は反抗的ということになってしまい、めっちゃいじめられました」

それは、圭太さんがぽっちゃり体型だったことも大きい。

「白豚、ドイツ豚などと言われましたね。今でもいじめの中心人物の顔と名前は憶えていますよ。いじめの内容は壮絶すぎて語りたくありません。先生は見て見ぬふりをしていました」