※本稿は、田中圭太郎『ルポ 大学崩壊』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。
「研修」の内容は人格否定のパワハラだった
「4年前の今日は、退職強要研修の最中でした。私は「四十数年のあなたの人生の天国と地獄を切り開いてきた深みや重さを全く感じない」「あなたのような腐ったミカンを追手門の中に置いておくわけにはいかない」「絶対にあなたは要らない」と一方的に人格を否定され、パニックになりました。長時間にわたって、参加者全員に人格否定の言葉が浴びせられるのを聞くのも辛かった。はっきり言って、あれは拷問です」
悔しさを滲ませながら語るのは、追手門学院に勤務していた40代の元職員だ。2016年8月に受講した追手門学院とコンサルタント会社ブレインアカデミーによる研修が原因で体調を崩して休職していたが、休職期間が満了したとして2020年8月に解雇された。
「あの研修と執行部との面談がきっかけでうつ病になりました。いまでも当時のことを思い出すと体が動かなくなります。何とか職場に戻ろうと思っていましたが、バッサリと切られてしまい、悔しいし、悲しいです」
元職員は解雇された直後の8月24日、同じ研修を受講して休職中の職員2人とともに、追手門学院と理事長の川原俊明氏、それにブレインアカデミーと講師の西條浩氏を相手取り、大阪地方裁判所に提訴した。違法な退職強要を受けたなどとして、慰謝料などの損害賠償を求めていて、2022年11月現在も大阪地裁での審理が続いている。損害賠償請求額は提訴時の約2200万円から、約3600万円に増額された。
この裁判は全国の学校法人関係者の間で注目を集めている。それは、追手門学院による「研修」があまりにも異常だったからだ。受講したのは提訴した3人だけではない。合計で18人が受講し、それぞれ大学や中学、高校などに勤務していた。「研修」とは名ばかりで、全員に対してパワーハラスメントとも言える人格否定の発言が浴びせられるなど、事実上の退職強要だった。