10人が退職し3人が休職に追い込まれた

参加者の多くは頭痛や吐き気を起こすなど体調に異常をきたした。中には泣き出す職員もいた。しかし、同席していた追手門学院の人事課職員は止めるわけでもなく、ただ監視していただけだった。元職員はこう振り返る。

「人事課職員が5日間同席していたのに、1回も止めに入ろうとしなかったことに驚きました。自分以外の人に浴びせられるパワハラの言葉のシャワーを目の当たりにせざるを得ない状況に、とてもじゃないけれども耐えられませんでした。それでも5日間ひたすら我慢するしかなかった。誰も命を落とさなかったのが不思議なくらいです。なぜ研修をした講師は罪に問われないのでしょうか」

壁に手をついてうなだれる男
写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz
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退職強要「研修」をきっかけに、参加した多くの職員が体調を崩した。18人のうち9人は心療内科などにかかり、うつ病や不安神経症と診断されたり、薬の服用が必要になったりした。2017年3月末までに10人が退職し、提訴した3人のように休職に追い込まれた人もいた。

研修後にも執行部による面談が繰り返され、理事長室に呼ばれて「退職勧告書」を理事長から直接手渡されるなど、追い詰められていく。「退職勧告書」に書かれていたのは、人格否定とも言える言葉の羅列だった。

視野が狭く、論拠にデータの裏付けもなく、思考が浅く幼いと見え、向上心が見受けられないというのが不可の要素であるが、その不可の原因を自ら追求する姿勢も見られず、向上しようとする積極的な姿勢も見受けられない。物事の本質を理解する能力が欠落しており、自ら業務に関する研究をして業務に活かそうとの姿勢も見受けられないので、未だに全てに関して考えが稚拙であり(後略)。

コンサルには退職者一人あたり100万円を支払っていた

一連の経緯から、川原氏ら追手門学院執行部とブレインアカデミーが連携して、パワハラと言える退職強要をした事実が浮かび上がる。さらに、「研修」によって職員を学院の意向に沿うように、退職もしくは職種変更させた場合、一人あたり100万円の成功報酬がブレインアカデミーに支払われる契約になっていることが、契約関係の書類などから明らかになった。

2016年8月の稟議書によると、「受講者に自律的キャリア形成への変化が認められた場合」、1人につき税込みで108万円を支払うことが記載されていた。言葉は選んでいるが、退職させることを指していると考えられる。また、「受講者が個別キャリア形成コンサルティングサービスに申し込みをされた場合」は、一人につき税込みで54万円を支払うと書かれている。これは、退職させて、ブレインアカデミーが紹介して再就職させた場合を指すのだろうか。

この「研修」に、追手門学院は最大3000万円強を予算外で用意したといった情報もあった。同年10月時点でのブレインアカデミーから追手門学院への請求書を見ると、実際にやりとりされた金額の一部を知ることができる。