10人が退職し3人が休職に追い込まれた
参加者の多くは頭痛や吐き気を起こすなど体調に異常をきたした。中には泣き出す職員もいた。しかし、同席していた追手門学院の人事課職員は止めるわけでもなく、ただ監視していただけだった。元職員はこう振り返る。
「人事課職員が5日間同席していたのに、1回も止めに入ろうとしなかったことに驚きました。自分以外の人に浴びせられるパワハラの言葉のシャワーを目の当たりにせざるを得ない状況に、とてもじゃないけれども耐えられませんでした。それでも5日間ひたすら我慢するしかなかった。誰も命を落とさなかったのが不思議なくらいです。なぜ研修をした講師は罪に問われないのでしょうか」
退職強要「研修」をきっかけに、参加した多くの職員が体調を崩した。18人のうち9人は心療内科などにかかり、うつ病や不安神経症と診断されたり、薬の服用が必要になったりした。2017年3月末までに10人が退職し、提訴した3人のように休職に追い込まれた人もいた。
研修後にも執行部による面談が繰り返され、理事長室に呼ばれて「退職勧告書」を理事長から直接手渡されるなど、追い詰められていく。「退職勧告書」に書かれていたのは、人格否定とも言える言葉の羅列だった。
コンサルには退職者一人あたり100万円を支払っていた
一連の経緯から、川原氏ら追手門学院執行部とブレインアカデミーが連携して、パワハラと言える退職強要をした事実が浮かび上がる。さらに、「研修」によって職員を学院の意向に沿うように、退職もしくは職種変更させた場合、一人あたり100万円の成功報酬がブレインアカデミーに支払われる契約になっていることが、契約関係の書類などから明らかになった。
2016年8月の稟議書によると、「受講者に自律的キャリア形成への変化が認められた場合」、1人につき税込みで108万円を支払うことが記載されていた。言葉は選んでいるが、退職させることを指していると考えられる。また、「受講者が個別キャリア形成コンサルティングサービスに申し込みをされた場合」は、一人につき税込みで54万円を支払うと書かれている。これは、退職させて、ブレインアカデミーが紹介して再就職させた場合を指すのだろうか。
この「研修」に、追手門学院は最大3000万円強を予算外で用意したといった情報もあった。同年10月時点でのブレインアカデミーから追手門学院への請求書を見ると、実際にやりとりされた金額の一部を知ることができる。